「人道支援活動」には厳しい声も聞かれる
いうまでもなく、こうした人道支援活動は国際社会、とりわけイスラーム諸国の間で、イスラーム世界の盟主としてのサウジアラビアの存在意義に影響するものだ。ほかにも、かつてのオスマン帝国の領土であった東ヨーロッパのバルカン半島諸国や、かつて「中国」として国交を築いていた台湾など、ムスリムが少数派の国・地域ではモスクの建設費の援助やクルアーンをはじめとした書籍の寄贈も積極的に行っている。
ただし、こうした活動でサウジアラビアが世界のムスリムの庇護者や、人権外交に勤いそしむ国家といった評価を得るわけでは必ずしもない。たとえば、「パレスチナ難民に金銭援助をする前に、彼らの人権状況が改善されるための外交的努力をイスラエルに対して直接に行えばいいではないか」といった非難は定番である。またKSRelieが支援対象に含むイエメン難民の増加は、サウジアラビア自体が2015年に軍事介入したことでイエメンの内戦が激化したことと無関係ではない。ロヒンギャ難民に関しては、「(難民を生んだ)ミャンマー政府を批判する一方で、中国新疆ウイグル自治区のウイグル族の状況は見て見ぬ振りか」といった厳しい声も海外メディアからは聞かれる。