ベビーブームはなくリバウンドだけ

少子化についてもう一人、警鐘を鳴らすのは、第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストだ。星野氏は、2020年の妊娠届け出数に一定の仮定を置いたうえで算出した、2021年の日本の出生数の見込み値を、2020年よりもさらに低い79万7360人と試算している。

「2022年の出生数は、2021年よりは増えると思われますが、リバウンドの域を出ません。基本的に(出生数は)減少トレンドにはあり、コロナ以前からその減少スピードは加速しています」と言う。さらに、「出生数の減少が一時的であれば、将来人口を考えるうえでは深刻な問題にはなりませんが、仮に2021年の落ち込みからリバウンドがなかった場合、2065年時点の人口は8443万人になると推測されます」という。また、日本の人口が1億人を割るタイミングも2050年となり、国立社会保障・人口問題研究所の予測の2053年から3年早まる結果になるという。

子育てが「楽しくない」日本

少子高齢化は、日本だけでなく、多くの先進国が抱える問題だ。ただ、国際的に比較しても、日本の現状には何らかの手を打たないといけないと思うところがある。

2020年に内閣府が日本、フランス、ドイツ、スウェーデンの各国の1000人以上の20~40歳代の男女を対象に行った「少子化社会に関する国際意識調査」に興味深いデータがあった。

この調査で「子育てに楽しさを感じるときが多いか」と聞いたところ、日本では、「楽しさを感じるときの方がかなり多い」(27.9%)と「楽しさを感じるときの方がやや多い」(50.9%)を合計した『楽しさを感じるときの方が多い』は78.9%となった。他国の結果を見ると、スウェーデンが91.0%で最も高く、フランス(85.9%)、ドイツ(84.5%)、日本の順である。日本の数字は、2015年度調査の86.2%より7.3ポイント減少しているという。

また、小学校入学前の子どもの育児における夫・妻の役割についての考えを聞いたところ、日本では、「主に妻が行うが、夫も手伝う」(49.9%)が約半数を占めており、「妻も夫も同じように行う」(40.5%)が続く。ところが、他の3か国では「妻も夫も同じように行う」と答えたのがフランスでは60.9%、ドイツは62.7%、そして、なんとスウェーデンは94.5%だ。日本の女性たちからしたら、なんともうらやましい数字である。この調査から見ても、他の3カ国は、子育てに対するハードルが低いとみられるし、北欧が子育てしやすい国と言われるのもうなずける。