浅草、アメ横、上野公園……。台東区といえば東京の下町の観光地というイメージが強かった。しかし浅草通りから南に広がる御徒町、蔵前、浅草橋界隈はいま「徒蔵(かちくら)」と呼ばれ、バッグ、雑貨、アクセサリーなどのクリエーターが続々とアトリエ兼ショップを開業。台東区の新しい顔として脚光をあびている。地図を片手に店めぐりをする客も増えてきた。
このムーブメントの発信地ともいえるのが、台東区がファッションやデザインの起業者向け創業支援事業として2004年に開校した台東デザイナーズビレッジ(デザビレ)。卒業生38組中、19組が台東区内で起業し、徒蔵人気の基礎を築いた。インキュベーションマネージャー(村長)の鈴木淳氏は言う。
「徒蔵は、洋服以外の身の回り雑貨の道具から材料、職人に至るまで、すべてが揃った世界でも希有な地域。客が作り手の顔を見て、語りながらモノを買える製造販売型の町なんです」
10年には、秋葉原と御徒町の中間地点のJR高架下に、JR東日本都市開発が「モノづくり」をテーマにショップやアトリエ、飲食店などを集めた「2k540 AKI-OKA ARTISAN」をオープン。デザビレ卒業生が自身のアトリエ、ショップから同時発信するイベント「SPEAK EAST!」や、「モノづくりのマチ」をテーマにクリエーターや職人、企業が220組以上も参加する「モノマチ」といったイベントも相次ぎ、「クリエーターと職人の町」は急速に知名度と集客力を上げている。
「生産地がアジアにシフトし、台東区の廃業率は23区中トップクラス。製造業は下請けではなく、デザイン性の高いモノをつくってブランド化するか、自ら製造販売するしか生き残る方法がない。この地域がそのきっかけになれば」と鈴木氏。日本の製造業の明日が台東区から見えてくる!?