「それまで楽しみにしていてください」と伝えてソフトに断る

あるとき新米ママ(お母さんのほうのママ、です)の知り合いが、同じママ友に教えてもらったという、「度重なる義父母の来訪」に対処するとき有効だったひと言を教えていただきました。それが、

次はこちらからいついつ遊びに行きます。それまで楽しみにしていてくださいね。

というもの。ポイントは「それまで楽しみにしていて」のひと言にあります。それまで楽しみにしていてくれということは、「それまでは遠慮していただけますか」の裏返し。「顔を見ない時間があるほうが、会ったときにはよりうれしさも増しますよ」というソフトな提案をしているわけです。

ご両親の誕生日でも、何かの記念日でも、いつでも構いません。「次はこちらから訪ねていく」と宣言する。すべてのケースに通用するかどうかはわかりませんが、あまりカドも立たず、直接的に迷惑だとも言わず、間を置いてくれという要望を伝えるには使えそうな表現ですね。ぜひ参考にしてみてください。

どうやって「早く帰ってください」と伝えるか

友だちが家に遊びに来てひとしきり盛り上がり、さてそろそろという折り合いになっても、マッタリモードになってしまい、誰も腰を上げようとしない。「近くまで来たついでに寄ってみた」という知人の突然の来訪につき合って家に上げたはいいけれど、いつまでたっても席を立とうとしない。

「そろそろお開きにしたい」「いつになったら帰るんだろう」「そろそろ帰ってほしいな」と心がざわめきだす——でもさすがに「もう帰って」とは言えない。さあ、困りました。

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京都の人がはっきりと本音を言わないことの例えのひとつに、「ぶぶ漬けはいかがどすか?」という表現があります。ご存じの方も多いかと思いますが、ぶぶ漬けとはお茶漬けのこと。お茶漬けは、お酒を飲んだとき最後の締めに食べるもの、それが転じて、「もう締めにしましょうか=だから早く帰ってください」という意味になります。

この京都独特の表現の意味を理解せず、「ではお言葉に甘えて遠慮なくいただきます」などと言おうものなら、「なんて常識がない人なんだ」ということになってしまうといわれています。

また、「さかほうき」といって、玄関や出入り口に上下逆さまにした箒を立てると長居している客が帰るという迷信的なおまじないもあります。これには、箒だけに「家から客を掃き出す」という意味合いがあるのだそうです。

ぶぶ漬けも逆さ箒も、「もうそろそろ」のニュアンスを伝えることで、相手が自主的に腰を上げるのを促す、という方法です。いずれにしても、ながっちりの来客に「早く帰ってほしい」とはなかなか言いにくいものなのですね。飲食店でも同じようなことが言えます。