味の素海外食品部専任部長 渡邉 信 わたなべ・まこと●1961年生まれ、山形県出身。85年入社。90年調味料部。2000年国際事業本部加工用調味料部。05年九州支社(加工用調味料事業)。08年海外食品部。

そこでつくりあげたのが、現物を届けると、その場で代金を回収するという現金直売の仕組みだった。一方、商品は現地の消費者の懐具合に合わせて、小分けにし、買いやすい価格で販売する。ちなみに、「味の素」で最小容量と価格を見ると、タイが10グラム1バーツ(3.23円)、フィリピンが2.4グラム0.5ペソ(1.22円)、インドネシアが1グラム50ルピア(0.58円)といった具合である。

「例えば、3グラムというのは数日で使い切る量なんですね。お客さんにはこれを毎日買いにきてもらう。それで営業マンは、お店にこまめに何度も通って、売ってくるというのが、現金直売システムの特徴です。小売店側もそんなにお金があるわけではないので、何日か分を買って、それを売り切ったら、また我々のセールスが行ったときに買ってもらう」(渡邉)

だから、営業マンの評価査定は売り上げではなくインボイス(伝票)の枚数だ。

「売り上げをつくろうとすると、無理に押し込んだりするとか、そういうことがありますが、この仕組みが始まったときから営業マンの評価は伝票の数で行う。何度行って、コミュニケーションをどれだけ取ったかっていうのが、一番の評価のポイントなんですね」(渡邉)

味の素の海外進出は、どの料理にも使えて汎用性の高い「味の素」から入り、日本でいえば「ほんだし」に当たる風味調味料、「Cook Do」に当たるメニュー用調味料、さらにスープや冷凍食品、缶コーヒーなど付加価値の高いものを展開していくというのが定石だ。

タイでは「味の素」のシェアは8割と、調味料市場を制覇。風味調味料でもトップブランドを維持している。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(撮影=渡邊清一)