価格を上げつつも「大盤振る舞い」

一般的な福袋は「5000円」や「1万円」といった区切りのよい価格も多いが、今回の「スターバックス福袋2021」の価格は7500円(税・送料込み)。

ちなみに前回(福袋2020)は、店舗販売分が7000円、オンラインストア販売分は7500円(同)だった。前々回(福袋2019)は店舗販売分のみで6000円。中身は変わっているが、商品価格は少しずつ上がってきた。

これを「高い(安い)」と思うかは人それぞれだが、「こんなに商品が入っていてオトク」という姿勢は一貫している。中身次第で価格は変わるが、福袋2020の場合は、実勢価格で1万5000円を超える商品が入っていた。

2020年シーズンの福袋
提供=スターバックス コーヒー ジャパン
2020年シーズンの福袋

「福袋に対して、オトク感を期待されている点も理解しています」と後藤氏は前置きしながら、送り手の思いをこう明かす。

「福袋を開ける時のワクワク感や感動はもちろん、スターバックスでは福袋を通じて『コーヒーを楽しむきっかけを届ける』ことが一番大きなメッセージだと考えています」

毎回、福袋にはテーマも込める。「福袋2020」は屋外でもコーヒーを楽しむきっかけづくりと、「お出かけ」をテーマに、汚れにくいトートバッグ、サンドイッチボックス、ジッパーバッグなどを入れた。「福袋2021」は前述の環境面も意識した商品構成だ。

ファンも従業員も満足する方法を模索

1996年に日本1号店が東京・銀座に開業した米国発祥のスターバックスが、日本国内で福袋の販売を始めたのは2000年ごろだった。だが、福袋で欠かせない要素の「大盤振る舞い」は、見方を変えれば、商品をディスカウント販売すること。

やり方を間違えれば、ブランドイメージも低下する。

一方で同社は、米国系企業にありがちな「本国のやり方を押しつける」のではなく、「ローカライズ」(≒郷に入っては郷に従え)的な視点を持つ会社でもある。

「福袋については『日本の風物詩をスターバックス流にアレンジする』ことも、ローカルへのリスペクト(敬意)の表現方法と考え、中身や販売方法を進化させてきました」

その福袋販売で、ターニングポイントとなった出来事はあったのだろうか。

「販売手法に関しては2018年のオンライン事前抽選の導入です。人気を呼ぶのはありがたいのですが、購入のために並んでいただくことが、お客さまにご負担をかけており、また対応するパートナー(従業員)の負荷にもなっていました」

2019年シーズンの福袋
提供=スターバックス コーヒー ジャパン
2019年シーズンの福袋

同社には「コーヒービジネスではなく、ピープルビジネス」という言葉がある。この「ピープル」はいろんな意味があり、顧客や従業員を大切にする視点も欠かせない。

「そこでオンライン販売を行った結果、パートナーの負荷も大きく軽減できました。当時、十数店舗を担当するDM(ディストリクトマネージャー)から、『その分、店舗でゆったりお客さまに向き合うことができた』と聞いたのも印象に残っています」