「貯蓄から投資へ」と盛んにいわれている。それはすべての人に当てはまることなのだろうか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「国はiDeCoやNISAへの投資を勧めているが、やめたほうがいい人もたくさんいる」という――。
※本稿は、荻原博子『買ったら一生バカを見る金融商品』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
「iDeCoはやらなきゃ損」は本当なのか
2017年1月、それまで希望する会社だけが導入していた年金制度「401k」が、会社に企業年金のない会社員、自営業、専業主婦など現役世代のほぼすべての人に拡大されました。
自分で出す掛け金を、自分で運用する個人型確定拠出年金で、通称「iDeCo」です。金融庁が「貯蓄から資産形成へ」の旗振り役となり、国民が自ら年金を作るべく、積極的に投資を勧めています。
iDeCoは老後に向けて毎月一定額を、あらかじめ選んだ投資商品で運用していくもので、簡単にいうと投資信託の積み立てです。
iDeCoのメリットは、
①毎月の掛け金は全額所得控除になるので、所得税、住民税が安くなる
②運用中に出た利益には税金がかからない
③年金を受け取るときは、退職所得控除と公的年金等控除になる
普通に株や投資信託で運用すると利益に税金がかかりますが、iDeCoなら税金面でおトクというわけです。
国も無限大に税金を安くするわけにはいかないので、iDeCoには積立額の上限があります。会社員で会社に401kのある人と公務員は年14万4000円まで、自営業は年81万6000円までが所得控除の対象です。
ここまでなら「iDeCoをやらなきゃ損」と思う人も多いと思います。けれども、本当にそうなのでしょうか。