「出世したくない」という姿勢はリスクと隣り合わせ
ここからは、主に無印良品での「新入社員の育て方」を紹介しながら、若い社員を強く育てるために必要なことを考えてみます。
入社後3年間で、「無印生まれ・無印育ち」の社員を育てられるかどうかが決まります。
鉄は熱いうちに打て。そこでうまく打てなかったら、人は育つどころかしぼんでいきます。新入社員が成長するかどうかは、教える側にかかっているのです。
若い世代のビジネスマンは、出世を希望しない人が増えているとよく聞きます。
管理職に昇進したところで、給料はあまり増えないのに責任は重くなる。これ以上仕事に追われるのは嫌だ。部下の面倒を見るのは大変そう――そんな思いがあるのかもしれません。しかし、「現状維持」は実は一番危険な選択です。
現在、グローバル化があらゆる分野で加速し、多くの企業が海外進出に軸足を移しています。海外の投資にお金をかけたい企業としては、人件費はなるべく抑えたいのが本音でしょう。早期退職を募り、管理職ではないベテランには早々に出て行ってもらい、安い給料で雇える新人で補いたいと考える企業は年々増えています。
つまり、出世せずに今と同じように仕事をしていくことは、真っ先に切り捨てられるリスクと隣り合わせなのです。
なぜ入社約3年で「店長」を任せるのか
無印良品でのキャリアは、全国にある店舗の店長からスタートします。すべての新入社員は、入社後数年で店長になると決まっています。
新入社員は「商品の開発をしたい」「海外に行ってみたい」「広報の仕事をしてみたい」といろいろな理由で入ってきますが、まずはお店のスタッフとして店舗に配属されます。そして、約3年で店長を目指してもらうのが既定路線なのです。
無印良品以外にも、飲食店や小売業では、新入社員をまず店舗に配属して、店長を経験させている企業があります。こういった業種では店舗がビジネスの最前線なので、現場を肌で感じてもらおうというのが企業側の狙いでしょう。
無印良品でも、「現場の大変さやお客様の声を知らずに本社に入っても、なにもできない」という考え方があります。しかし、それだけではありません。店長を務めさせることで、リーダーとしての視点を養ってもらおうと考えています。
店長は店のトップとして、すべての責任を負う立場です。商品を仕入れて店に並べて売る、それは仕事のほんの一部に過ぎません。スタッフを育てるのも、売り上げ目標を立てて販売計画を練るのも、トラブルが起きた時に対処するのもすべて店長の役割です。つまり、若くして一国一城の主になるということです。