プロ野球もデジタル化を進めているものの…
それでは、日本のプロ野球は、GAFAの経営の強みを意識しているのだろうか。
デジタル化に関しては、実は、プロ野球でも、冒頭で紹介したMLBの「トラックマン」が導入されている。また、最新の「ホークアイ」がヤクルトの本拠地で導入され、今年のセ・リーグ優勝に貢献したという(日本経済新聞2021年10月30日)。しかしながら、こうしたデータが、地上波放送やネットコンテンツなどプロ野球全体で体系的に生かされているとは言い難い。
例えば、プロ野球NPBの公式サイトを覗いたことがある読者はどれくらいいるだろうか。正直なところ、サイト内容は豊富ではあるが、見やすいとはいえず、試合経過だけなら、「スポーツナビ」などの民間アプリを利用する方が便利そうだ。
動画配信にしても、パ・リーグの動画だけを配信する「パ・リーグTV」が象徴するように、NPB、セ・パ両リーグ、各12球団が、デジタル化に関して独自にバラバラに対応しているのが現状だ。特にセ・リーグの球団スポンサーには読売新聞社や中日新聞社、TBSとメディア企業が入っていることも、ネット配信などプロ野球全体でのデジタル化を難しくしている。
チケット販売におけるダイナミックプライシングやキャッシュレス化などもプロ野球全体で統一的に進んでいる気配はない。
ボールパーク構想には期待できる
サブスク化に関しては、シーズンチケットの販売拡大、有料ファンクラブの充実、有料放送の会員拡大など、年会費を継続的に払ってもらうシステムづくりが不可欠だが、まだ緒についたばかりだ。富裕層を呼び込むVIPラウンジやVIPチケットの導入もまだ一部で始まったばかりだ。
もっとも日本でもボールパーク構想が広がっているのはいい流れだ。ショッピングモールやキッズパーク併設によるプラスαの集客によって、家族連れなどにも継続的に球場に足を運んでもらうことができる。2023年3月に誕生予定の、日本ハムの「北海道ボールパーク・Fビレッジ」や、巨人の後楽園での新球場計画も期待できよう。