球団数を増やし、市場拡大を図る
MLBでは、長らくア・リーグ、ナ・リーグ合わせて16球団の時代が続いた。拡張化は1961年に始まり、20球団→24球団→26球団→28球団と増えていき、1998年には、アリゾナとタンパベイに新球団が誕生し、現在の30球団となった。拡大化で誕生した球団は14球団もあり、いまやMLBの半数近くを占めているのだ。
球団数の拡大により、本拠地が北米に広がった。選手をはじめ新たな雇用が生まれ、地元での関連ビジネスも生まれる。プレーオフがより充実し、対戦カードも多様化してファンを一層惹きつけることになる。
MLB機構のコミッショナーであるロブ・マンフレッド氏は、2015年に就任以来「近い将来2球団を新規増設する」と発言していることが、度々報じられている。筆頭候補は、MLBチームがないラスベガスとナッシュビルで、ポートランド、モントリオールといった都市でも既存球団からの本拠地誘致運動が起きている。これら地域では、新設球場建設を掲げた投資家や著名人が地元自治体とも協力しながら、球団招致レースを展開している。MLBによって、積極的な拡張化を人工的に起こし、MLB全体の市場を拡大し資産価値をさらに増やそうとしているのだ。
収益は各球団に分配し、MLB全体で稼ぐ
MLBはただ闇雲に拡張化しているだけではない。各球団の戦力や経営状況の格差が広がったり、MLB全体のブランド価値が損なわれたりしないような仕組みも取り入れている。
例えば、各球団はグッズ販売や飲食などの球場ビジネスで上がった収益の約30%をMLB機構に収め、MLB機構はその拠出金を全球団に均等分配する収益分配制度が設けられている。また、MLBでは、チームの総額年俸が定められており、基準を超えたチームには「ぜいたく税」と呼ばれる罰則金が課せられる。資金力のある人気球団だけに優秀な選手が集中するのを防ぎ、戦力均衡によるMLB全体の活性化を重視しているのだ。
なお、スポンサー契約、キー局との放映権契約、球場外グッズ販売は、全てMLB機構が代表して契約している。例えば、ナイキとは2020年シーズンから10年間、全球団のユニホーム右胸にロゴを入れることで、総額10億ドル(約1100億円)で合意した。FOXなどとは2028年まで総額51億ドル(約5610億円)の放送権契約を締結している。個別交渉するよりもMLB機構が窓口となることで交渉力を高めることができるのだ。得られた益は、全30球団に均等に分配。公平性・透明性が保たれ、個別球団ごとに稼ぐのではなく、MLB全体で稼ぐビジネスモデルが完成している。