「毎月数十万円分はプラモデル類を購入していたはず」

廊下のゴミを片付け、ようやく洋室に入ることができた。ゴミの山をかき分けながらの作業になった。ドアはこれ以上開けられない。
廊下のゴミを片付け、ようやく洋室に入ることができた。ゴミの山をかき分けながらの作業になった。ドアはこれ以上開けられない。(撮影=今井一詞)

男性宅は広めの2LDKだが、すべての空間がプラモデルやモデルガンを中心とするゴミで埋め尽くされていた。玄関、トイレ、風呂、キッチン、リビング。そのすべてに160センチ以上のゴミが積み上げられている。窓も埋まっており、ゴミを排出しなければ、玄関より先には立ち入れない。

ただよく見ると、ゴミ山には未開封の箱がきれいな層になっているところもあり、そこはまるで“秘密基地”を思わせた。端から見れば孤独な空間だが、本人にとっては好きなものに囲まれた幸せな居場所だったのではないか。

それにしても——。

「毎月数十万円分はプラモデル類を購入していたのではないか」と石見さんは言う。石見さんの見立てでは部屋中のプラモデル類をすべて売りさばけば、中古であっても100万円近くになりそうだとのこと。しかしこの男性宅の室内を整理するにはおよそ200万円近くがかかるという。

 

親が、子供が、きょうだいがゴミ部屋で亡くなったら?

私は星野さんに尋ねた。

「もしお父さまが病気でなく、このようなゴミ部屋で亡くなっていたら、遺族としての気持ちに変化はありますか?」

ゴミ部屋でくしゃみが止まらなくなりながら、星野さんはこう答えた。

「困ったことをしてくれたな、という気持ちが強くなったでしょうね。ただ死ぬだけでなく、ゴミという迷惑まで残していったのか、と。自分事として考えても、整理業の方に費用をお支払いして処理を依頼することになったでしょう。その費用負担を強いられるストレスがあったでしょうね」

あなたならどうするだろうか。親が、子供が、きょうだいがゴミ部屋で亡くなったら? 次回は遺品整理で、高額な料金を請求する悪徳業者を取り上げよう。(第5回へ続く)

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