会社の後輩が先に昇進して、嫉妬と焦りで夜も眠れない。組織にいる人なら誰もがぶつかる苦しい悩みです。両足院の副住職で瞑想アプリをてがけるInTripの代表取締役僧侶の伊藤東凌さんは「冷静に考えてみてください。『後輩が先に昇進した』という事実によって、一見何かを失ったように見えるけれども、実はあなたは何も失っていません」といいます――。

実は何も失っていない

嫉妬や焦りの沼にはまって苦しくて夜も眠れない。その気持ち、よくわかります。

でも冷静に考えてみてください。「後輩が先に昇進した」という事実によって、一見何かを失ったように見えるけれども、実はあなたは何も失っていません。もしかしたらそこには何か得るものがあるのかもしれないし、学びがあるのかもしれない。

両足院副住職の伊藤東凌さん。
撮影=Hiroshi Homma
両足院副住職の伊藤東凌さん。

ところが嫉妬や焦りの沼が深すぎて、そこにはまっていると、なかなかそうは思えないものです。

そんなときは長期目線で物事を見るように意識することが大切です。たとえば、今は後輩が先に昇進したけれど、自分はその場に残って組織のバランスを見るタイミングであるとか、先にいってもらった方がこの先自分がリーダーになるための力を養えるとか、未来まで視野を広げてみる。そうすると嫉妬や焦る気持ちが軽くなり、沼から抜け出す第一歩となります。

植物を見ると気づくこと

その手立てとして、私がおすすめしているのが「植物を見る」ことです。植物の葉や枝を見ていると、こっちの葉よりそっちの葉のほうが大きいとか、この枝はあの枝より伸びているなどと細かい差が目につきます。これはどちらかというと短期目線です。

撮影=Hiroshi Homma
撮影=Hiroshi Homma

しかし、だんだんと目線を下に落として、根のほうに向かえば向かうほど、地面の下のどこに根ざしているんだろうと木全体に目がいきます。これが長期目線です。

短期目線で一枚一枚の葉を比べていたのが、長期目線で木全体を見る癖がつくと、ふだんの生活でも、会社の中にいる一人ひとりではなく、会社全体だったり、あるいは日本社会だったり、そういう大きな視点で物事をとらえられるようになります。

いつもパートナーのような存在として、植物のあり方を見てほしいと思います。