7人に1人が孤独を感じているとされるイギリスでは、孤独は重要な健康問題と捉え、官民挙げて解消に取り組んでいる。ジャーナリストの多賀幹子さんは「細やかな目配りで高齢者を笑顔にしたイギリスの事例から日本が学べるものは多い」という――。

※本稿は多賀幹子『孤独は社会問題』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

老人ホームのビンゴ大会で当たって喜ぶシニア女性
写真=iStock.com/monkeybusinessimages
※写真はイメージです

「7人に1人」よりも多くの人が孤独を抱えている

英国赤十字社は約6560万人の人口のうち、「常に」または「しばしば」孤独を感じる人は900万人以上いると報告している。約7人に1人という計算だ。ただ、孤独であるとは認めない「隠れ孤独」も少なくないだろうから、実際はこれ以上の数字が予想される。

孤独は、退職や離婚、配偶者の死亡などの大きな転機に意識されやすく、適切なタイミングで支援が受けられない場合は、健康にも悪影響をもたらす。孤独は年齢と無関係といわれているが、やはり高齢者は孤独に陥りやすいようだ。それだけに、イギリスのボランティア団体の中には高齢者向けのものが目立つ。

慈善団体「Alive Activities(アライブ・アクティビティーズ)」(本部ブリストル、2009年設立)は、「老人ホームに暮らす高齢者が外部の社会と密接につながり、個人として価値ある存在であることを認識してもらう。ダイナミックな行動を促し、創造性を養ってもらう」がモットーだ。高齢者には楽しくて、機会に恵まれた意味ある毎日を過ごしてほしいという。つまり、高齢者にとって現在の暮らしをもっと幸せにするのが目的だ。

坂くだりで高齢者の笑顔がはじける

とにかくアイディアがユニークだ。たとえば、地区で行われる文化、スポーツなどのクラブや同好会などに、可能な限り老人ホームの高齢者に参加してもらう。子どもたちが帽子をこしらえ、老人ホームを訪問して高齢者にプレゼントする企画も人気があった。また、ゆるやかな坂に厚手のビニールを敷いて、その上に大きくて厚手のクッションを重ね、高齢者を乗せて坂くだりをしてもらう。

あまりに大胆な企画に、「高齢者がけがをするのではないか」「怖くて尻込みするのではないか」と心配する声も少なからず上がった。しかし、やってみると高齢者に大変な人気だった。坂くだりを一度で止めてしまう人はめったになく、二度三度とすべりたがった。事前にボランティアのスタッフが何度も実際に坂をすべり下りて、「これなら絶対に大丈夫」というところまで改良を重ねた努力が実った。「あんな、高齢者のはじけるような笑顔は見たことがない。頑張ったかいがあった。すべて報われました」と話したという。

また、古い台所道具や家具などを地域の家庭から借りてきて図書館に並べ、高齢者の記憶をよみがえらせ、同世代の人たちと思い出を分かち合う企画も人気だった。懐かしさのあまり高齢者の目はきらきらと輝き、話に花が咲く。それは自分の生きた時代を肯定することなのだ。つまりは自分の人生の肯定に通じるという。