「高齢者にこそ意味のある毎日を送ってほしい」

プロジェクトの発案者は、「アライブ・アクティビティーズ」の最高責任者サイモン・バーンステインさんだ。彼は25年以上、いくつかの慈善団体で働いてきた。

この団体に入ったのは、2016年だ。彼は話す。「老人ホームなど施設で暮らすお年寄りたちは、一見恵まれていて幸せそうです。しかし実際は、退屈で孤独な毎日を送っていることが多いのです。ホームの職員らは多忙のために気持ちはあっても、残念ながら高齢者一人一人の希望に合わせて活動をする時間を持てないことが多い。そこで私たちは、高齢者の願いをかなえるために立ち上がりました。願い事は、パブで一杯やりたいとか、編み物をしたいとか、その人の心からの希望ならば、何でもよいのです。中には、アメリカの歌手、故エルヴィス・プレスリーに会って握手したいとか、故マリリン・モンローとハグしたいという実現不可能な願いもあって、すべてをかなえることはもちろん無理です。

でも、できるだけかなえるように努めています。その際は、地元住民の方々の協力が欠かせません。これまでいずれの時も近隣の皆さんにたくさん手助けをしていただいているので、感謝しています。今回は、地元のスーパーマーケットや警察の皆さんに多大な協力をいただきました。私たちは、高齢者にこそ刺激に満ち創造性豊かな意味のある毎日を送ってもらいたい。コミュニティーがほんの少し協力しただけで、それは可能になることがほとんどです」。

ニュースを知った人たちからの反響は予想以上だった。「子どものころに“おまわりさんごっこ”とか、“泥棒ごっこ”をしたことを思い出した。あれはとても楽しかったから、高齢になって、ぜひもう一度やってみたいと願う気持ちはよくわかる」「104歳の初逮捕って、なんてユニークな発想でしょう。ユーモアがあって、温かい気持ちになりました」「夢を上手にかなえてあげた警察官など皆さんのやさしさが伝わってきて、こちらも幸せな気持ちになります」などがあった。いくつになっても、夢を持つこと。それをかなえてあげたいと願う人がいること。そんな気持ちのつながりが、人を孤独から救うのかもしれない。