あえて炎上する宣伝文句を選ぶ企業側の心理

筆者は報道対策アドバイザーという仕事をしており、炎上企業の広報対応やネットの対応のお手伝いをすることが多く、当然その中には、「言葉狩り」をされた企業も多くある。

そのような形で叩かれる企業を内部から見ると、「マーケティングが先鋭化している」という共通点があることに気がついた。

例えば、ある企業の新サービスの宣伝文句がジェンダー方面の批判にさらされたことがある。半年ほど前、ほぼ同じようなパターンで別の企業も叩かれていることから、SNSやネットでは「学習しねえな」「炎上商法では」などという声も上がっていた。

問題が発覚してから呼ばれた筆者としては、まずは情報を整理しなくてはいけない。そこで担当者に、なぜ他の企業で炎上しているようなリスキーな言葉を選んだのかなどの経緯を説明してもらったのだが、そこで明らかになったのは、担当者がローンチ前から「言葉狩り」のリスクがあるということを認識していたということだった。

危ない予感はしていたが、マーケティングやSNSプロモーション担当者などみんなで会議を重ねていく中で、ある程度批判をされても話題にならないと意味がない、という結論になってこの宣伝文句でいくことにした、というのである。

資料を指している人たち
写真=iStock.com/greenleaf123
※写真はイメージです

SNSで「バズる」ために犠牲になるもの

これは「わかる」という人も多いのではないか。企業で新製品や新サービスのローンチを担当している人々に、会社側が求めるのは「結果」である。どれだけ売れたのか、どれだけ実績をつくったのかということなので、とにもかくにも注目を集めて、話題にならないといけない。SNSで言うところの「バズる」というのが重要な目的なのだ。

そうなると当然、「言葉狩り」の標的となる。攻めたワードや、表現のインパクトが優先されて、人権やジェンダーへの配慮が乏しくなってしまうからだ。

「炎上しちゃうかな? でも炎上するくらいバズって欲しいな」という葛藤もあるが、やはり「結果」が欲しいので、明らかに危なっかしい言葉・表現でも、現場や経営陣がゴーサインを出してしまう。これまでこういうケースを多く目にしてきた。

そして、これはあくまで筆者の想像だが、「お母さん食堂」も当てはまるのではないか。