「もみ消した」のではなく「時間がかかった」

2人の処分と統括局長の解任は9月初め、朝日新聞や西日本新聞で報じられている。だが、この話にはまだ続きがあった。

じつは今回の経費不正は、発生直後の2019年中に内部通報が寄せられていた。複数の関係者によると、日本郵便のコンプライアンス部門が調査に動き、経費の架空計上について把握していたにもかかわらず、統括局長らを処分することはなかったという。

事情を知りうる社内の関係者からは、「コンプライアンス部門がもみ消していたのでは」との見方が出ている。会社が不正を把握しながら、処分せず、その理由も明かさないのだから、「もみ消した」と思われても仕方ないだろう。

日本郵便の親会社、日本郵政の増田寛也社長は10月1日の記者会見でこう認めた。

記者会見する日本郵政の増田寛也社長=2021年10月1日午後、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
記者会見する日本郵政の増田寛也社長=2021年10月1日午後、東京都千代田区

「申告から処分まで時間がかかったのは事実。確認が遅れていたのは否めない。内部からの申告に対する処理が、体制も含めて十分ではなかった」

筆者が「当初、処分に至らなかった理由」を尋ねると、増田氏はこう述べた。

「時間がかかりすぎたことは反省している。当時の処理が十分でなかった。大きな反省点だ」

日本郵政と日本郵便のせめぎあい

統括局長による不正がなぜ見過ごされたのかは、まだはっきりしない。ただ、かんぽ生命の大規模な不祥事を受けて社長に就いた増田氏の経営体制のもと、不正があっても見過ごすような「非常識」は排除しようという姿勢が強まっているのは間違いない。

今回の処分は、過去の通報情報が改めて日本郵政側に届いたことで、再び調査が動き出した結果だ。ある郵政関係者は「増田さんら日本郵政側が厳正な対処を求めたのに対し、日本郵便内には『決着済み』だとして抵抗もあった」と明かす。