彼は、そんな国では生きづらかったと思います。モソモソと片隅で草を食んでいた。そこへある日、日本海を越えて肉食おばさんがやってきたんですね。いきなりクルッ、ガボッ! みたいな(笑)。彼にとっては、許容範囲が広い日本のほうが居心地がいいはず。草食系はもちろん、ゲイでも変態でもわりと受け容れられますし、学歴・収入とはまったく違う方向での成功もありえますからね。
結論から言うと、草食を肉食にするなんてしょせんムリです。草食男子は世界に誇れる日本製品。風俗嬢たちは、「テクは一番。優しい、値切らない、乱暴しない」と口を揃えます。別に私が世界中の男とやったわけじゃございませんが(笑)、この特性は保つべきだし、ソニー製品同様世界に発信すべきでしょう。
草食男子には草食なりの楽しみ方があります。草食はあくまでその弱っちいところを愛でるべき。下手なのをうまくするより、下手なままいつまでも上達しないのを楽しむのです。ずーっと童貞とやってる気分を味わえますよ。そんな余裕こそが、肉食女にとって必要なもの。自分がガツガツしていることをちゃんとわかっていないと、何も始まらんでしょう。余裕のないガツガツは醜いですから。
この世はすべて組み合わせと相性。すべての人にとって最高の人なんていません。肉食、草食を問わず、いい人でも一緒にいて全然心が弾まない、とか、嫌な奴だけど一緒にいて楽しいってこと、ありますよね。ウサギに高級肉食わしても、ライオンに最高の牧草を与えても喜びません。向上させようとか、変えようというのは違う。大切なのは、あるがままを受け容れ、認めることです。そもそも今の夫がガツガツの肉食ならば、私との関係は始まっていません。
(井上暉堂=構成 岡本 凛=撮影)