最低800万円の自己資金が必要

<strong>農業経営 有坪民雄</strong>●1964年、兵庫県生まれ。船井総研を経て農業に従事。著書に『農業で儲けたいならこうしなさい!』。
農業経営 有坪民雄●1964年、兵庫県生まれ。船井総研を経て農業に従事。著書に『農業で儲けたいならこうしなさい!』。

農業はラーメン屋や弁護士、職人と同じ自営業ですから、まずはお金がなければ始められません。さらに農機具も準備しなければならず、土地の確保も難しく、住宅も必要です。自己資金は、例えば1年分の生活費とランニングコストに充てる500万円プラス設備投資300万円として、最低でも計800万円が必要です。それ以下の資金で可能な選択肢となると、せいぜい露地栽培の野菜くらいしかありません。

農業で食えるようになるには3年かかるといわれますから、できれば2年間は自己資金でやっていけるように、2000万円くらいの準備が理想でしょう。簡単ではありませんよ。就農の理由が、今置かれている状況からの逃避であれば、農業の現場はもっとひどい事態を招くかもしれないことを予測しておくべきですね。農業は、逃避先としては不適切です。

だからといって、就農をそれほど恐れる必要もありません。就農して食えるようになった人は半分、という統計もあります。食っていけるという意味での成功率は、ほかの自営業に比べれば随分高いといえます。そもそも地域でできるものですから、その土地にしかない名産を作れば、そう多くのライバルがいるわけではありません。経験がなくても、やり方次第で充分に農業を始めることはできます。

また、従来は土地の確保がネックでしたが、それは今後、どんどん解消されていく可能性があります。09年の新規就農者数6万人中、半分近くを占める60歳以上の人々の大半は趣味的農業です。70歳以上の就農者は、今後5年以上経てばずいぶん減っていくでしょうし、後継者も少ない。そのため、今後は広い耕地が余り始めます。すでに耕作放棄されて草ボウボウになった農地が問題になっています。だから、農業を目指す若者が「自分たちがやります」と言えば、やらせてくれる可能性は相当高くなるでしょう。過疎化で住宅の低価格化も進むし、安い中古農機具も出てくるかもしれません。