労働力人口が増えているのは60歳以上だけ

2021年初来、韓国の失業率は低下している。ただし、15~29歳の若年層を取り巻く雇用・所得環境は楽観できない状況にあると考えられる。その背景には大きく2つの要因がある。

まず、長期の傾向として若年層の失業率が他の世代よりも高い。2003年以降の韓国の失業率(季節調整前)の平均値は3.6%だが、15~29歳の世代では8.4%に達する。年齢の区切り方は異なるがわが国の15~24歳の失業率も全体よりは高い傾向にあるが、韓国ほどに世代間の雇用格差は深刻化していない。

次に、韓国では若年層の労働力人口が減少している。労働力人口とは、仕事をしている人と完全失業者(働いてはいないが就職活動をしている人)を合計したものだ。コロナ禍以前の2019年9月に比べて、2021年9月の韓国の労働力人口は全体としては増加している。世代別に見ると、60歳以上の労働力人口が増加し、それ以外の世代で減少している。

出生率の低下、社会心理の悪化…

これは、かなりいびつだ。若年層に加え、30歳代、40歳代の現役世代の労働力人口の減少も顕著だ。その一因として、出生率低下がある。それに加えて、社会心理の悪化の影響も軽視できない。若年層の労働力人口の減少は、働く意思を失って労働市場から退出する、あるいは新規参入をためらう若者の増加を示唆する。

一つの見方として、韓国において労働市場への新規参入者に位置付けられる若い人にとって、希望する就業機会を見つけることの難しさは増しているようだ。その要因として文大統領の経済政策は大きな影響を与えた。政権が発足して以降、文政権は新しい需要を創出するために産業育成を強化するのではなく、最低賃金の引き上げや労働組合法の改正などによって企業から就業者への分配を強化した。

また、文政権は公共部門での短期雇用を増やすなどして高齢者の雇用も増やした。失業率と労働力人口の推移から、文政権下の労働市場では、若年層と、それ以外の世代での雇用機会と所得の格差が一段と拡大したように見える。