労働市場は改善しても若者の失業率が目立つ
足許、韓国の経済指標を見ると、とりあえず労働市場は改善基調だ。2020年9月に4.0%だった完全失業率(季節調整値)は、2021年9月には3.0%にまで低下した。業種別に見ると、コロナウイルスの感染再拡大で飲食などのサービス業の雇用環境は依然厳しいものの、建設、公共サービス関連の分野で雇用は増えている。
しかし、雇用の中身を見ると、必ずしも楽観はできない。というのは、世代別の失業率に見逃せない跛行性があるからだ。特に、季節調整前の世代別の雇用関連データを見ると、15~29歳の若年層の失業率は5.4%と、他の世代に比べてかなり高い。つまり、若年層の雇用状況が悪いのである。
韓国の状況は日本も他人事ではない
その一因として、すでに労働市場に参入した世代へのベネフィットを重視した文在寅大統領の経済政策による負の影響は大きいとみられる。既存の労働者は手厚く保護する一方、これから労働市場に入ってくる若年層は厳しい状況にあっている。懸念されるのは、韓国の労働市場において、持続的に雇用が生み出されづらくなる展開だ。若年層の雇用機会が増加しなければ、企業が技術や組織運営のノウハウを次の世代に継承し、長期の存続を目指すことは難しくなるだろう。
少子化、高齢化、人口の減少によって国内経済が縮小均衡に向かうわが国にとって、韓国の若年層を取り巻く雇用・所得環境の厳しさは他人事ではない。人々が将来に希望と夢をもって生活できる環境を整えるために、政府は労働市場の流動性向上やリカレント教育などを強化すべきだ。それが、経済全体でのアニマルスピリットの発揮と成長を支える。