ドラマ化・映画化された『ハゲタカ』の著者として知られる真山仁さん。今回は満を持して政治小説という新しいジャンルに『コラプティオ』で切り込んだ。
「小学生のころから政治に興味がありました。実は小説家になったのも政治をテーマにしたものを書きたかったからです。デビューして7年、やっとこの作品に辿りつきました」
真山さんは熱い口調で自身の作品に込めた思いを語る。
「経済がうまく回れば、世の中が良くなる時代は終わったと感じています。今こそ政治に本格的に向き合った作品を書くべきだと思い、2009年の政権交代を受けて『コラプティオ』の準備を始めました」
『コラプティオ』で描かれた舞台設定は、3.11の東日本大震災後の日本である。さらに、震災復興の中から現れたカリスマ総理が原子力政策を推進するという驚きの内容だ。
「政権交代当初から注視していましたが、どう考えても政治がこのままで良くなるとは思えませんでした。そこでまず、強いリーダーシップを持った総理はどういうものかを提示したかった。『コラプティオ』は10年2月から始まり、11年の3月に完結した連載小説でしたが、震災と原発事故を踏まえて作品を発表すべきと考え、原稿用紙換算で約500枚分を書き直しました」
真山さんは作品にリアリティーを持たせるために綿密な取材を行う。今回は首相官邸を主な舞台としたため、永田町周辺への取材も行った。
また、元新聞記者という経歴を生かし、本作では政治家と新聞記者の間にある独特の緊張感が再現されている。
「現実の日本のメディアの力は極めて弱い。情報に長けた人が官邸にいれば、メディアは完全に振り回されて、政権に思うように操られてしまうのではないかという側面にも踏み込みました」
本作を通じて真山さんが読者に伝えたいメッセージとは何か。
「今回の挑戦の一つは『政治って面白い』と読者に感じてもらうことにあります。そのため、政権を担っている60代の視点ではなく、あえて政治の世界で初心者扱いされている30代の2人の主人公の目線で物語を進めました。普段は政治に馴染みがない若い人に政治の醍醐味を感じてほしいと考えたためです。そのうえで、政治に関心を持つことで社会を変えられるかもしれない、と思ってもらえればうれしいです」