アップルやテスラの生産にも深刻な影響が

約20の地域で電力不足が相次ぎ、東北部の遼寧省などでは停電が起きた。米アップルなどに部品を供給する江蘇省の工場が操業を停止した。その影響は米テスラなどにも及び、日本企業でも代替の生産地を探す動きが出始めた。

電力不足や電気料金の高騰で海外企業が中国から離散すれば「世界の工場」という立場が揺らぐ。その結果として生じる雇用の減少や経済の低迷は習指導部が掲げる「共同富裕」政策にも影響を与えかねない。

政府の指導を受け、石炭の主産地である内モンゴル自治区、山西省、陝西省の3地域は江蘇省や浙江省、広東省など工場が集積して電力不足が深刻な沿海部に安定供給する契約を結ぶなど、躍起だ。

日本での主な電力の電源燃料はLNGだが…

電力不足はインドにも波及し始めた。135ある石炭火力発電所のうち、10月1日時点の石炭在庫は平均で4日分しかなく、半数以上では在庫が3日未満にまで落ち込んだ。政府が推奨する最低2週間分の確保を下回り、8月初めの同13日分から減少したと、電力当局の話として報じられている。

日没時の石炭火力発電所
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需給逼迫の背景にあるのが、世界的な石炭価格の上昇だ。インドは中国に次ぐ世界2位の石炭輸入国で、主にインドネシアやオーストラリアなどから石炭を輸入する。

アジアの発電用石炭の指標であるオーストラリア産のスポット(随時契約)価格は10月上旬時点で1トン200ドル(約2万2000円)を突破。08年7月に付けた過去最高値(約185ドル)を更新した。新型コロナ禍からの経済正常化でアジアでの消費が増えたほか、同じ発電燃料である天然ガスの高騰を受けて欧米で代替的な需要も増えている。

同じアジアに位置する日本も無縁ではない。

大半の原発が止まっている日本での主な電力の電源燃料はLNGだ。そのLNGを巡り争奪戦が起きている。