米国、オーストラリア、カタールも「増産余地は乏しい」

世界からLNGをかき集めているのが中国だ。調査会社のケプラーなどによると、2021年の中国の輸入量は世界全体の約20%を占めると見込んでいる。8%だった15年に比べ12ポイント上昇する見通しだ。二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないエネルギー源として調達を増やしており、8月までの輸入量は5180万トンと、世界最大の輸入国だった日本(5137万トン)を初めて上回った。この増勢は続きそうで、世界的な電力不足の震源となりそうだ。

欧州では天然ガスの卸売価格が年初から3倍強も上昇した。英オックスフォード・エネルギー研究所の推計では、欧州における21年の天然ガスの供給不足は年間ガス需要の1割弱に及ぶ。その不足分を補おうと電力会社がLNG確保に向かっている。

液化天然ガス貯蔵タンク
写真=iStock.com/Eric Middelkoop
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8月は449万トンと前年同月に比べ6%増えた。天候不順で風力発電が振るわなかったのに加え、ロシアが政治的対立を理由に、ウクライナに設置されたパイプライン経由での供給を絞っているためだ。

中国や欧州がLNG調達にしのぎを削る一方で、供給は頭打ちだ。世界最大の天然ガス生産国である米国は1~7月に過去最高の輸出量を記録したが、「液化設備は可能な限り稼働している」(商社幹部)という。オーストラリアやカタールなど他の主要生産国も増産余地は乏しいとされる。

エネ庁「今年の冬は電力不足に陥る可能性が高い」

日本では昨冬、寒波などでLNGが不足して卸電力価格が急騰、電力小売事業者の一部が破綻した。電力各社はこうした経緯を踏まえてLNG在庫を増やしている。資源エネルギー庁によると、日本の電力大手が保有するLNG在庫は8月末時点で約240万トンと1年前より5割多い。

だが、足元ではじわじわと、その影響が身近な生活にも及び始めている。電気料金は6月から一部の電力会社で値上げされ、ついに9月分からは大手電力・ガス会社全社が値上げに踏み切った。11月分も全社が値上げする。

この冬、政府は電力不足を起こさないために休止している石炭・石油火力発電所の再開なども認める方針だ。エネ庁も「今年の冬は電力不足に陥る可能性が高い」と警告、無駄な消費を避けるよう予防線を張っている。電力大手各社も「節電要請」発令の一歩前まで追い込まれた昨年冬の教訓を生かし、LNGを安定的に調達できる「臨戦態勢」をしいている。

しかし、寒波の襲来で在庫が底をつき、スポット(随時)契約に手を出すような事態になれば一気に「停電」の不安は高まる。需給逼迫でLNGは高騰。国際指標であるアジアのスポット(随時契約)価格は10月上旬時点で、1カ月前より9割近く上昇、今年1月に付けた過去最高値を更新した。自由化で体力の弱った日本の電力大手がLNGを「買い負ける」懸念もある。