最後は、人間を超える存在との絆です。まずは自然。1本の木を見ても、土の中に根を張って、幹があって、葉があり、花が咲く。人間の業ではどうしようもないことが、いっぱいあるじゃありません? わたくしは作家の遠藤周作さんと親しかったのですが、彼は軽井沢に別荘があり、多忙でひと夏空けたことがあった。翌年に別荘に行くと、六角形だかの同じような穴が家中に開いていたと言うんです。キツツキの仕業だったんですね。もはや建て直さなきゃならないほど、穴がいっぱい。皆、同じ綺麗な形にです。

遠藤さんが、穴だらけの家を眺めながら「こんなに穴を、同じ形に綺麗に整えることができる鳥がいるってすごいことだ。これは人間業じゃない、人間を超える神の存在がなければできない。自然界はそういう素晴らしい力を、示してくれているんだ」としみじみ語っていたのを覚えています。

そして人間を超えた存在、それは神との絆です。神様は愛であり、慈しみである。あなたを大切にするために、すべてを計らってくださっています。その一人一人に注がれる慈しみに感謝をして、賛美の気持ちを込めてお祈りをするのが大切です。

不安の心を照らす一筋の光

新型コロナは人類の歴史に大きなインパクトを与えています。コロナ前は、洋服で着飾ったり、贅沢な物を持って誰かと比べたり、そういうことに心をウキウキさせましたが、今は「自分がどうしたら居心地良くできるか」にみんな焦点を当てています。どうすれば心の中が満たされるかを一生懸命考える時代になりました。

そんなときだからこそ、嫌なことがあって落ち込んだり、怒りの感情が湧いたとき、感情を一定の温度に保てるように訓練をしていきましょう。負の感情が浮かんだときは、良いことを思い出すんです。子供の頃の楽しかったこと、最近で一番うれしかったこと、美味しかったものとか。そうすると感情を平らに保つことができます。

過去の楽しい話を日頃から自分の中にたくさん溜めておくのがいいでしょう。わたくしたちは、過去に戻って不安になり、自分を責める。そして将来のことを心配し、不安の種を作り続けます。未来の不安が襲ってきたときも「そんなことはまだ来ないから」「過去にもこんな良いことがあったから、必ず良くなる」と自分に言い聞かせましょう。コロナは心の訓練期です。コロナによって与えられた恵みともいえるでしょう。