コロナ禍による収入減、失業……。懸命に生きていても、日々の不安は尽きないもの。そんな市井の人の心に寄り添い、これまで50万人の悩みに耳を傾けてきたシスター・鈴木秀子さんに、「心の保ち方」とその人生哲学を聞いた。『プレジデント』(2021年10月29日号)の特集「ひとりで、ゆっくり考える。楽しい哲学入門」より、記事の一部をお届けします――。
人々の悩みに向き合い続けて
たくさんの人がわたくしのもとに相談に訪れます。わたくしはただ黙って話を聞いて、「ああ、そういう気持ちなんですね」と耳を傾けるだけです。わたくしから「こうしたらどうですか」と言う必要はありません。終わりの時間が近づき「あと10分です」とお伝えすると、たいていの方はパッと切り替えて、自分で結論を出しちゃうんですよ。人間って不思議なものでね、心の中身を全部吐き出して、自分が受け入れられたと思うと、自分で答えを出していくんです。気持ちを外に吐き出すと、客観的に見えるんでしょうね。
ある日、外国船に乗っている40代の男性が相談に来ました。いつも家を空けているので、奥さんがノイローゼ気味になり、子どもを虐待しているという悩みでした。
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