銀行口座であれば、すぐに口座は凍結されている

もちろん30代女性は、被害に気づいてすぐに、警察に相談して、自分が開設した国内の暗号資産交換業者にもこの件を伝えています。

ところが取引履歴をみると、その後も、2万、4万円と少額ですが、送金されています。これまでの手口をみても、最初は少額の送金をさせて、多額の送金へと移行させるのが手です。おそらく2人の方が送金していると思われますが、まさに彼らが、詐欺に遭い始め、これから大金を騙し取られる恐れがあるのです。しかし、取引履歴からだけでは、その方が誰かはわからず、彼らにその警告を伝えるすべはありません。

詐欺とは時間との戦いです。対処が遅れれば遅れるほど、被害は拡大していきます。一刻も早く、この送金アドレスを止める策を、通報を受けた警察や暗号資産交換所にはとってもらいたいところです。

今回、筆者に報告を寄せてくれた2人の送金先は億を超える額をだまし取った“実績”があるわけですが、こうした犯罪組織が使う送金アドレスが国内外にどれだけあるのか。想像しただけで恐ろしくなります。

もしこれが銀行口座であれば、詐欺との通報があった時点で口座は凍結されて、振り込めない状況になります。暗号資産においても当然、すぐに不正と思しき送金アドレスを止めるような仕組みが必要ではないかと考えます。

暗号資産の取引をしたこともない前出の40代女性のように、口座を開設して数週間のうちに、1700万円もの大金を送金できてしまう現実もあります。口座開設まではある程度の時間はかかりますが、それさえクリアしてしまえば、詐欺師は短期間に数百万円を繰り返し送金させることができてしまいます。

銀行で口座開設後すぐに多額の送金が繰り返されれば、銀行側もおそらくマネーロンダリングを疑うはずです。その逆もしかりで、開設したばかりの国内の口座に、突然、億単位の金が短期間で次々に送金されれば、不正口座と判断される可能性もあるでしょう。

フードをかぶってモニタ前に座るハッカーのイメージ
写真=iStock.com/Milan_Jovic
※写真はイメージです

今後は、不審な送金パターンから不正を見抜くなど、詐欺を防ぐ最後の砦である暗号資産交換所の監視の目がより強化される必要があります。

口座を開設したばかりで、これまで暗号資産の取引経験のない人は、いわば普段、ATMを使わないがために振り込め詐欺に遭う高齢者と同じ状況だといえます。ATMから高齢者が振り込む際には限度額が設定されていることもあり、「詐欺に注意」との音声も流れます。

今後、暗号資産の口座を開設して間もない人には、送金する前にポップアップ画面を出して詐欺への注意喚起をしたり、事前に送金する金額の「限度額設定」をしたりする対策も求められるのではないでしょうか。

被害者からの報告を受けた警察の縦軸の動きと、暗号資産交換業者の監視・対策強化、同業者間の不正情報の共有の横軸が、しっかりと交差されてこそ、少しでも多くの犯罪収益金の流れを止めることができると考えます。

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