詐欺被害を報告したのになぜ暗号資産交換所は対策を打たないのか
ここで問題となるのは、送金アドレス先の暗号資産交換所(犯罪組織が口座開設した交換所)の対応です。本来なら、詐欺に使われている送金アドレスとわかった時点で、そこへの送金はできないようにするべきと考えますが、実際にはそうなっていません。
筆者が送金アドレスAの履歴をさかのぼって調べてみると、最初に送金されたのは今年5月下旬で、最後の送金は7月下旬です。また、送金アドレスBでの取引開始は今年6月上旬で、最後の送金が8月末日です。
これに前出の40代女性の被害状況を照らし合わせてみます。
女性が国内の暗号資産交換所に、詐欺の被害に遭ったと通報をしたのが6月下旬。そして、誰かによって送金アドレスAへ最後に送金されたのが7月下旬。つまり、40代女性の通報から、約1カ月は、他の詐欺被害者たちが送金できる状況になっていたわけです。
送金アドレスBにおいては、最後の送金が8月末日ですから、約2カ月の間にこのアドレスにお金を送って被害に遭った人がいる可能性があります。
おそらく詐欺に使われた送金アドレスと確定されたことで、送金アドレスが使えなくなったと思われますが、それまでの時間が遅すぎはしないでしょうか?
もう一人、同様な手口で、今年9月中旬に70万円をビットコインにて国内の暗号資産交換所から送り、総額150万円を超える被害に遭った30代女性の送金アドレスも調べてみました。
30代女性が送った70万円分の「0.13***BTC」は、10分後にはいくつかのアドレスに分けて再び送金されていました。あっという間にお金が移されていることがわかります。この送金アドレスの取引回数は600回を超えており、総額は9月末現在で「38.***BTC」で、日本円で1億8000万円を超えています。
いつからこのアドレスが使われているのか、さかのぼってみました。すると、2021年2月頭の「0.0027*BTC」(約1万3000円)が最初の入金でした。それから9月に彼女が送金するまで、約8カ月も生き続けていたのです。
最初の送金から2カ月後の4月頭には「1.82***BTC」(約873万円)が被害者とみられる誰かによって入金された記録もみられます。この方が警察に被害届を出しているかは定かではありませんが、億を超えるような総額になるのですから、少なからず、ここに送金したうちの何人かは警察や暗号資産交換所にも「詐欺」との通報をしているはずです。
驚くのは、9月下旬に調べてみると、こちらの送金アドレスは今も生きているという事実です。