5年前と比べて人口は約87万人も減った
日本の人口減少は不可避です。
今年6月に2020年国勢調査の速報が発表されましたが、人口は5年前と比べて約87万人も減少しました。国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口(平成29年推計)報告書」によれば、2100年には人口5972万人になります。現在の半分以下になるわけです(出生中位・死亡中位推計)。これはちょうど1925年(大正14年)の人口5974万人(総務省統計局「大正十四年国勢調査結果の概要」)とほぼ同等です。
こう聞くと「一刻も早く少子化を是正して人口減少を回避せねば」と思われるかもしれませんが、たとえどんな政策をとったところで、少子化は改善されませんし、人口減少の歯止めをかけることも叶いません。
今回は、そんな出生と死亡のメカニズムについてお話しします。
勘違いをされている方も多いのですが、人口減少は少子化によってのみ引き起こされるのではありません。人口減少とは、死亡数が出生数を上回る自然減によって生じます。日本はすでに2007年には自然減状態に突入しています。今後、毎年のように日本の人口は確実に減り続けます。
日本は世界1位の高齢化率で、長寿の国ですが、それは、1951年から2011年まで60年間にもわたって人口千対死亡率(※) がわずか10.0未満の状態が続いたことによるものでもあります。しかし、高齢者とて老不死ではありません。現在の高齢者たちがお亡くなりになる時が確実にやってきます。それが「日本の多死社会化」です。そして、それはもう間もなく数年後から始まります。
※1000人の人口集団の中で発生する比率のこと
戦争中と同等の人数が毎年亡くなっていく
社人研の推計によれば、2023年から年間150万人以上死ぬ時代が到来します。これは、太平洋戦争期間中の年間平均死亡者数に匹敵するといわれます。戦争もしていないのに、戦争中と同等の人数が死ぬ国になるのです。しかも、それが2071年まで約50年間継続するのです。2022年~2071年までの50年間に日本で約7960万人が亡くなる計算です。冒頭述べた2100年人口5972万人が決して誇張ではないとおわかりでしょう。
そもそも戦後の日本の人口増加というものは、戦後2度のベビーブームをはじめとした出生数の増加によるものだけではなく、死亡率が少ないというこの「少死」現象によるものです。そして、今後の日本の人口減少もまた出生数の減少というより高齢者の大量死亡という「多死化」によって引き起こされます。