「塾通いは4年生から」という中学受験の常識が変わりつつある。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の西村則康氏は「偏差値にとらわれた学校選びは、大学受験でむしろ不利になる恐れがある。このため塾通いを1~2年の短期間でおさえる“ゆる受験”が増えている」という――。

※本稿は、プレジデントFamilyムック『中学受験大百科 2021年完全保存版』の一部を再編集したものです。

教室の机勉強する女性
写真=iStock.com/miya227
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大手塾は立場上、話したがらないが…

「中学受験をする場合、塾は最低でも小4から」「習い事はあきらめないと、志望校には合格できない」「3年間、親は子供に付きっ切りで勉強を見てやる必要がある」。こうしたことは、長らく中学受験の世界で「常識」とされてきた。

しかし近年、1~2年の短期間の塾通いで中学受験を行う層が増えつつあると、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の西村則康氏は言う。

「ここ数年、中学受験は過熱する一方です。少子化傾向にもかかわらず、受験者数は2015年以降増加傾向にあります。そんな中、従来とは異なる受験スタイルを選択する家庭が増えてきました。『習い事を続けたまま受験をしたい』『受験勉強はさせたいけれど、塾に3年間通わせるのは大変なので、1年だけ受験勉強をさせて、中堅私立に進学させたい』『4教科まんべんなく勉強するのではなく、子供が得意な分野を評価してくれる試験方式の学校に進学させたい』といった“ゆる受験”への指導の要望は近年増加傾向です」

背景には、家庭の教育観の多様化、入試制度の変革があるようだ。

「従来の4教科型、算数と国語のみの2教科型に加え、英語やプログラミング、思考力など必ずしも膨大な量の暗記を必要としない新しいタイプの試験も増えており、気軽に挑戦する家庭が増えてきたのです」

中学受験専門のプロ家庭教師、瀬川和士氏にも、短期決戦での受験の相談が増えているそうだ。

「大手塾は立場上、話したがりませんが、受験の過熱は中堅~上位の学校を中心とした話です。1年だけの受験勉強で受かる学校はたくさんありますし、なかには魅力的な学校もたくさんあります。習い事や得意なものを伸ばしつつ、偏差値的におトクな学校に入るのは、新しい選択肢になっていくかもしれません」

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