子供という共通項目が互いの壁を低くしていった

我が家と地元集落の距離感が少し縮まったのは、地元の子供会のおかげだった。

お子さんらを持つ親御さん同士が集い、いっしょにイベントをする。子供会の親子レクレーションをやったり、通学のバス停の刈り払いを親同士で行ったりする。

最初はお母さんたちが仲良くなり、参加するお父さんたちも交流ができる。

子供という共通項目で、新旧住民が分け隔てなくひとつの行事をする。それが互いの間にあった壁を少しずつ低くしていったような気がする。

私の住む地区では、毎年恒例の行事として子供神輿がある。

樋口明雄『田舎暮らし毒本』(光文社新書)
樋口明雄『田舎暮らし毒本』(光文社新書)

小さな神輿を子供たちが担ぎ、「わっしょい、わっしょい」と声を合わせながら、地区を回ってお賽銭を集めるのである。それを毎年やっているうちに、地元の人たちから「お疲れ様」「ご苦労様」と声をかけられるようになった。

地元との親子レクでも、昔はボウリングとか、ありきたりのイベントばかりだったが、私たちが参加するようになって、フライフィッシング教室をしたり、体験イベントでカヤックに乗ってみたり、そんな試みをやってきた。

旧住民の親御さん方にとっては、かなり新鮮な体験だったようだ。

私たち移住者との付き合いがなければ、きっと一生経験できなかったことだろう。

地元のお母さんがお子さんとふたり、楽しそうにカヤックをこいでいた光景は、今でも忘れられない。

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