挨拶を返されるまで三~四年ぐらいかかった

私はこの土地に移住してきた当初から、猟友会や他のハンターたちと戦ってきた。

あいつはマスコミを連れてきたと地元民からいわれたが、それは事実である。そのおかげで我が家の周囲は銃猟禁止区となった。

ここらの田畑が荒らされるのはお前のせいだ――と面と向かっていわれたことはないが、そんな噂が流れていたということは知っている。

とにかくよそ者が地元で、勝手に目立つことをするのが嫌いなのである。

私はサルの群れの生態調査をボランティアでやったり、愛犬とともにモンキードッグの訓練を受け、市内各地で野生ザルの群れを追い払う活動をしてきた。その土地その土地で農家の人々から感謝の言葉を投げられたが、ついぞ地元からの出動要請は一度もなかった。

仕方なく自主的に活動し、サルたちが山を下りてくるたびに出動して、私と犬とで追い払った。そのため、地元の圃場でサルによる農業被害はきわめて少なくなったはずだ。つまり、訓練された犬とハンドラーのペアがいれば、里の農地は守れるのである。

当初、地元の人たちはなかなか受け入れてくれなかった。

里を散歩して挨拶して、ちゃんと返してくれるまで三年から四年ぐらいかかった。いつだって無表情でぶっきらぼう、たまに言葉を交わせばタメ口である。

――あんた、どこから来た。何をしてる人だね?

そんないい方が日常だった。

挨拶と笑顔を絶やさず、根気よくコンタクトをとる

中には当初から心を開いてくれる地元民もいたが、明らかに少数派だった。

毎朝、子供をスクールバスのバス停に送っていた。その道すがら、毎度のようにすれ違う人がいた。明るくおはようございますと声をかけても、まったく返事をしてもらえない。目を合わせることすらしない。

それでも子供といっしょに元気に声をかけ、挨拶を続けていると、ようやく地味ながら返事をくれるようになった。そのうちに少し笑顔も見せてくれるようになった。

今では道端で立ち話ができる間柄である。

あきらめて、こちらから縁を絶ったらそうはならなかっただろう。

とにかく挨拶と笑顔を絶やさず、根気よくコンタクトをとり続けることだ。

かなりしんどいが、他に方法がないのである。