「2島プラスアルファ」を目指した安倍外交だったが…

ロシアのプーチン大統領は9月3日、ウラジオストクの東方経済フォーラムで、北方領土に進出する外国企業などへ10年間課税を免除する経済特区を創設すると発表した。

9月4日付「国境で」
国後島の地元紙「国境で」(9月4日付)より引用

加藤勝信官房長官はこの構想に対し、「ロシアの法令を前提にした経済開発に関する制度の導入は、わが国の立場と相いれず、遺憾だ」と反発した。

これで、2016年12月のプーチン訪日で合意した北方領土での共同経済活動は、ロシア側の強硬姿勢により事実上破綻した。ロシアが1956年の日ソ共同宣言(56年宣言)に基づく歯舞、色丹の引き渡しに応じていないことと併せ、「2島プラスアルファ」で平和条約締結を目指した安倍外交が挫折したといえよう。

ロシアは日本の不参加を前提に、中国や韓国企業を誘致し、実効支配を強化する構えだが、日本頭越しの開発が可能なのか。島の現状を探りながらその成否を探った。

北方4島の人口は5年間で2000人以上増加

北方4島はロシアの行政区画では、国後くなしり島、色丹しこたん島、歯舞はぼまい群島の3島が南クリル(千島)地区、最大の択捉えとろふ島がクリル地区を構成し、サハリン州に所属する。

国後島の中心地、古釜布で進む集合住宅の建設工事
サハリン州の通信社サハリン・インフォ提供
国後島の中心地、古釜布で進む集合住宅の建設工事

国後と択捉では地元紙が発行されており、筆者は国後の「国境で」と択捉の「赤い灯台」の2紙を購読しており、PDFで送られてくる。いずれもタブロイド版8ページで週2回発行。発行部数は数百部で、地区行政府の財政支援を受ける。政権べったりで、面白さはないが、島の現状を知るには有効な手段だ。

地区行政府の統計によれば、南クリル地区の定住人口は今年1月1日時点で1万2011人。過去5年間で1200人増加し、漸増傾向にある。内訳は、国後が9191人、色丹が2820人。歯舞群島は無人島で定住者はいない。

択捉島は6799人で、この5年間で約900人増加した。北方4島の人口は計1万8810人となる。これ以外に、択捉には約3000人、国後には約500人の軍人が駐留するが、軍人は定住者に含まれない。