収入が低い、貯金が増えない、暮らしが全然上向かない……。いつの時代も人々のお金の悩みは尽きない。アメリカの自己啓発の大家デール・カーネギーは古典的名著『道は開ける』の中で「大富豪のジョン・ロックフェラーも帳簿をつけていた。彼は夜の祈りの前に自分のお金の使い道を細かくチェックしていた。私たちも帳簿をつける必要がある」と述べている――。

※本稿は、D・カーネギー『超訳 カーネギー 道は開ける エッセンシャル版』(弓場隆訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

数万円のお金の授受
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経済状態よりも心の持ち方を改善する

どうしても経済状態を改善できないなら、それに対する心の持ち方を改善すればいい。

他の人たちも自分の経済状態を心配していることを思い出そう。私たちは世間の人たちに後れをとることを心配しているが、その人たちも金持ちの人たちに後れをとることを心配している。そして、金持ちの人たちも大金持ちの人たちに後れをとることを心配している。

つまり、どんなに金持ちになろうと、人間は自分より金持ちの人たちに後れをとることを心配するのだ。

貧しくて、ほしいものが手に入らなくても、心配したり悩んだりする必要はない。貧しいことがどうしても心配な人は、ローマの哲学者セネカの言葉を肝に銘じよう。

「自分が持っているものが不十分だと思うかぎり、たとえ世界を手に入れたとしても心は満たされない」

貧しくても偉業を成し遂げた人たち

今、あなたはお金に困っていて経済不安を抱えているかもしれない。だが、貧しくても歴史に残る偉業を成し遂げた人たちがいる。

実際、興味深いことに、アメリカ史上最も有名な人たちの中には、経済的に困っていた人たちも含まれている。たとえば、ワシントンとリンカーンは大統領就任式に出席するために借金をして旅費をまかなった。

お金の使い方を学ぶ

ある婦人雑誌によると、人々の心配の7割までがお金に関することだという。統計学者のジョージ・ギャラップ博士は「大多数の人は収入がたった1割増えればお金の心配がなくなると思い込んでいる」と指摘している。たしかにそういうこともあるが、そうでない場合のほうが圧倒的に多い。

予算のエキスパートであるエルシー・ステープルトン氏に話を聞いた。彼女はファイナンシャルアドバイザーとして貧困層から富裕層までさまざまな階層の人たちの財務の世話を長年にわたってしてきた。

彼女はこう断言している。

「お金がより多くあっても、ほとんどの人は経済不安を解消することができません。実際、収入が増えても支出が増えるだけで、頭痛の種が増えるケースをたくさん見てきました。ほとんどの人の心配の原因は、お金を十分に持っていないことではなく、お金の使い方を知らないことです」