スポットライトを浴びる「夏の甲子園」が果たすべき取り組み
一方、夏の甲子園はどうだろうか。日本学生野球憲章では「学生野球が商業的に利用されてはならない」と定められており、実費以外の金品の提供を受けることができない。
そのため、朝日新聞も「金儲け」ととらわれる行為には慎重になっている。確かに、高校野球は教育的意義を重んじており、プロを含む他の競技が導入しているクラウドファンディング事例をそのまま採用というわけにはいかないだろう。
しかし、時代は変わった。主催者などが集めたお金で私腹を肥やすなら大問題だが、甲子園というビッグイベントで収益力を高め、コロナ対策の費用に充てるとともに、一般ファンにもなんらかの形で還元できる仕組みを作ってもいいのではないか。
コロナ禍でも、筆者は可能な限り「有観客」でのスポーツイベントを推している。ただ現状を考えると、全国から観客が集まるのは好ましくない。
阪神甲子園球場の収容人員は4万7508人(内野2万8465人、外野1万9043人)。緊急事態宣言下のイベントは人数上限が5000人だ。密にならないように使用できる客席を決めたうえで、5000席をクラウドファンディングで“発売”することは可能だ。仮に通常価格の数倍に設定したとしてもライブ観戦したいという熱心なファンが購入してくれるだろう。
席が離れていれば、誰かと会話をする機会はほとんどない。静かに野球を観戦できる。そもそも「お金儲け=悪」ではない。大切なのは使い方だ。大会で得た収益金は、主役となる球児たちにわかりやすいかたちで還元する。そして、もっと儲かり、他の高校スポーツにも資金を分配することができるのであれば、高校野球は本当の意味で“特別”なものになっていくはずだ。
ひときわスポットライトを浴びる華やかな甲子園が、高校スポーツ界のためになることをスポーツライターとして期待せずにはいられない。