「夏の甲子園」朝日新聞の1億円支援のお願いが“無視”されている
残すところ準決勝・決勝戦だけになった「夏の甲子園」(第103回全国高校野球選手権大会)。2年ぶりに開催された同大会だが、実は“窮地”に立たされているのをご存じだろうか。
コロナ禍前の一昨年に開催された第101回大会はチケット販売などで約6億5900万円の収入があった。しかし、今回は「無観客開催」となり、その大半が見込めない。そこで同大会を日本高等学校野球連盟とともに主催する朝日新聞社が運営するクラウドファンディングサイト「A-port」で1億円の支援を募っているが、まさかの大苦戦。この原稿執筆時(8月27日13時時点)で達成率12%(1252万5884円、支援者1501人)しか集まっていないのだ。
今回のプロジェクトについては以下のように説明文が掲載されている。
「スタンドの入場者は代表校の学校関係者に限り、一般のお客様向けのチケット販売は行いません。高校野球は入場料収入を財源にしています。その収入が大きく減る一方で、PCR検査やベンチの消毒など感染防止対策にかかる費用は膨らんでおり、運営は極めて厳しい状況に陥っております。どうか皆様のお力をお貸しください」
一般的にクラウドファンディングのリターンは、金銭的見返りのない「寄付型」、金銭的見返りが伴う「投資型」、権利や物品を購入することで支援を行う「購入型」の3つに大きく分類される。
ショボすぎる「返礼品」で達成率はわずか12%
今回は、礼状の送付やサイト上に名前を掲載するなどのリターンはあるが、返礼品はない。要は“寄付”という意味合いが強い。目標達成率12%という結果を見れば、このやり方では資金を集めるのは難しかったということになる。スポーツ関連のクラウドファンディングは「購入型」がメインになっており、関心が高まらなかったのだろう。また、以前の億単位の入場料収入はどこへ消えたのか、という見方もあるかもしれない。
逆風も吹いている。今夏の甲子園はさまざまなトラブルに見舞われた。天候不良によるスケジュール順延、コロナ感染での出場辞退(2校)。それから無観客開催と言いながら学校関係者を1校あたり2000人入れて、ブラスバンド(50人まで)の演奏も許可したことに批判が起きた(※8月22日の試合以降は野球部員、部員と指導者の家族、教職員に限定された)。
東京五輪や高校総体(インターハイ)は無観客で開催されて、選手の家族も会場に入ることは許されなかった。世間との乖離は大きく、「高校野球だけ特別なのか⁉」という声は根強いものがある。そして、一方では一般客は一切入場できないため、これまで高校野球を支えてきた熱狂的なファンはないがしろにされていると感じたかもしれない。それが、クラウドファンディングの苦境につながった部分があるだろう。