銀座のママが注意してみている仕事道具

私の仕事道具のひとつが着物です。私にとっての着物は、銀座の華やかさを演出するための衣装であると同時に、心を引き締めてお客さまをおもてなしするための“戦闘服”でもあるのです。ですからその手入れは欠かせません。

季節ごとの衣替ころもがえどきに、クリーニングに出すのはもちろん、常に湿気や汚れ、ほころびなどに気をつけてメンテナンスし、いつでも万全の状態で着られるように心がけています。また、草履も毎日きれいに拭き手入れし、着物柄や色に合わせて選んでいます。

ビジネスマンの仕事道具にもいろいろありますが、私が注意して見ているのは「靴」です。これまで銀座で多くの企業経営者や地位のあるお客さまとお会いしてきましたが、仕事がデキる方やビジネスで成功されている方は、総じて靴を大事にされています。

革靴を磨く手
写真=iStock.com/dimamorgan12
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みなさんやはり高価な靴を履かれていますが、そのお値段以上に、こだわりを持たれているのですね。履いた靴は毎回自分で磨く、休日にはまとめて靴の手入れをする、傷んでしまったらリペアに出してちゃんと直す――そうした「大切に使おう」という意識を持っている方も多いのです。

いつも手入れが行き届いている靴からは、「モノを大事にする人」「見えないところにまでしっかりと気を配れる人」という印象が伝わってきます。逆に手入れをしていない汚れた靴は「道具に気を使わない人」「汚れても放っておく人」というネガティブな印象につながってしまうことも。こういうことは一事が万事なのです。

デキない人はビニール傘を使い捨てしている

必要以上に高価な靴である必要はありません。それよりも、自分が履きやすく仕事しやすい“お気に入り”を探そうとする気持ち。そして、お気に入りを見つけたら、手間暇をかけて手入れして、末永く履こうとする気持ちが大事なのです。

よく、雨が降るたびにビニール傘を買って、使ったら使いっ放しという人がいます。急な雨の場合は仕方ありませんが、最初から「傘はビニールを使い捨てにすればいい」というのはいかがなものでしょうか。

確かに今はさまざまなモノが安価で手に入る時代です。一度使ったらそれっきりの使い捨てグッズがあふれ、「汚れたら洗うより」「壊れたら修理するより」「なくしたら探すより」新しく買い直せばいい――こうしたライフスタイルが当たり前のようになってきました。

それが悪いわけではありません。使い捨てのほうが便利で、効率的というケースもあるでしょう。私もときには使い捨てで済ませることもあります。でも、捨てられた商品はゴミとなって、環境への負荷になります。

強風そして豪雨の後、道端に投げ捨てられたビニール傘を目にするたびに、悲しい気持ちになるのは私だけではないと思います。何でもかんでも「すぐ買い替え」という発想は考えものです。モノや道具を大事にすることは、持続可能な社会をつくっていくためにも必要とされていることだと思うのです。