納得できる結論をリーダーが伝える

そして4つ目は、合理的意思決定のスキルです。

職場の会議には、最終的な結論を出すリーダーが必要です。A、B、Cの3つの案が出たなら、1つを採択するのは最終意思決定者のリーダーです。

わたしたち日本人が侃々諤々かんかんがくがくの議論を好まない理由のひとつとして、議論が雑然となったら、決める人も困るし、自分の意見が採択されなかった人も肩身が狭くなるかもしれないという配慮も、少なからずあるのではないでしょうか。そこに「どれだけ意見を自由に出しても、最後には合理的に、皆が理屈として納得できる形で意思決定をしてくれる」という最強のゴールキーパーみたいな人が構えてくれていたら、ずいぶんと自由に発言しやすくなるでしょう。

そこで、合理的な意思決定に必要なのが判断基準の明確化です。

例えば、先ほどのA案とB案を選ぶとき。議論を通して「A案はローリスク・ローリターン」であり、「B案はハイリスク・ハイリターン」であると整理できたとします。ただ、ローリスク・ローリターンも、ハイリスク・ハイリターンも、どちらにも良いところと悪いところがあり、なかなかそれだけでは選びきれません。そこで大切なのは判断基準です。

判断基準とは、上位目的にさかのぼり、それを達成するためには何が良いのか、で見つけることができます。例えば、「今チームにとって大切なのは予算達成であるから、収益化の確度の高いA案に目がいきがちであるが、もう1度、わが社のミッションに立ち返ろう。このままの商売を続けていては、わが社のミッションに通じる“脱炭素”に踏み切れない。ここは、たとえリスクが高かろうが、皆の力を結集してB案を目指し、理念を現実に変えていこうじゃないか」といったチームにとっての判断基準を示し、それを起点とした結論を見出すことです。これはリーダーにしかできない、あるいはリーダーがやるべき仕事です。

合理的な意思決定の技術を持つリーダーのもとでは、メンバーは安心して意見を述べられます。会議が盛り上がるかどうかは、ファシリテーターの腕とリーダーの合理的意思決定のスキル次第なのです。

最後に、アリストテレスの言う「ロゴス(論理)」と「パトス(情熱)」の言語化です。

さまざまな価値観や職業倫理を持った多様性のチームでは、「仕事だから、よろしく」ではなく、物事を理屈にそって説明していくこと(ロゴス)と、皆の心を鼓舞すること(パトス)を言語化していくことが大切です。先ほどのB案を選んだ理由のように、なぜ私たちは働いているのか、何を成し遂げようとしているのか、それを言語できちんと相手に伝えるのです。

多様性が重視され、クリエーティブなアイデアが求められる今、たとえグローバル企業に勤めていないとしても、グローバル・モードの会議は、ビジネスの成功につながるはずです。

(構成=伊田欣二)
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