社内のオンライン会議などで、議論が硬直してきた場面にも有効です。例えば、背景画像をいきなり焼き肉の写真に替えます。「どうしたんですか?」と聞かれますから、「いや、最近、みんなで焼き肉に行けてないから、気分だけでも」と冗談を交えて緊張をほぐします。いずれも私が実際にやっていることです。アイスブレークはたっぷり織り込んでいいでしょう。

会議の良し悪しはファシリテーター次第

3つ目の工夫は、「ファシリテーター」の配置です。ファシリテーターには、多様な意見が出る仕掛けを作ることを期待したいです。

前述のエドワード・ホールは、日本人のコミュニケーションを「高文脈」と呼んでいます。簡単にいえば、暗黙の了解(文脈)が多くあるなかで、ほんの少ない発話量でも十分お互いを察することができる、ということです。要は“空気を読む達人”なわけです。

この特徴は会議でも顔を出します。例えば、上司が会議中に「A案がよさそうだ」と興味を示せば、部下たちは「そこが落としどころか」と忖度して、その結論にむかって少しずつ“空気”ができていきます。そうなると反対意見が出なくなり、メンバーの多様な英知を活かせません。

そこで、ファシリテーターは多様な意見を引っ張り出す工夫をし、“空気”の読みあいを予防するといいのです。

工夫のひとつは、多様な意見を出す仕掛けです。例えば、「事前に全員が意見を書く」という方法があります。会議前に共有ができるグーグルのスプレッドシートを設定し、「この議題について、各自の意見を記入しておいてください」と連絡します。これだけでも、上司や他人の顔色をうかがわない意見を集めることができます。

あるいは意見出しのときに、「プロズ&コンズ」(Pros&Cons)という手法を使います。「プロズ」は利点、「コンズ」は欠点のことです。例えばA案とB案の是非を問いたいとき、1人ずつ「あなたはどっち?」と尋ねる方法はよくありません。発言力が強い人が「A案」と答えたら、「B案」と言いにくいなどの障害が生まれるからです。そこで、「プロズ&コンズ」を出そう、と言います。それであれば、意見の対立構造を生むことなく、全員が中立的に意見を述べることができます。

また、これに付随しますが、ミーティングを①ブレインストーミングと②意思決定のフェーズに切り分けることも有効です。「まずは、ブレストをしましょう。意見が多いほどいいから、反対意見もどんどん出してください」と促します。たとえ上司が「A案がいいな」と結論を急いでも、「B案をぶつけることで、A案の精度があがるかもしれません。B案のメリットも確認しましょう」とブレストを続行し、「まだ結論は出しませんよ」と念を押します。容易な「空気形成」に走らせないのです。

「賛成と反対」をやめれば会議は盛り上がる