為替取引は博打のようなもの
要は取引に参加している人の利益と損失の総和が等しくなる「ゼロサムゲーム」なのです。ですから為替で博打を張ろうというのであればそれは結構ですが、長期に資産作りをするために資産分散として通貨を保有し続けるということにはほとんど意味はありません。もちろん博打ですからたまたま上手くいって儲かることがあるのは言うまでもありません。でも繰り返しますが通貨というものはそれ自体が新しい付加価値を生むものではありませんから、通貨の両替比率に賭けるという行為は決して投資ではなく、投機すなわちある種の博打と考えるべきです。
海外の高金利債券も妙味があるわけではない
さて、ここまでのお話で外貨自体を持つことにはほとんど意味がないことはおわかりいただけたかと思います。では単に外貨を持つのではなく、外貨建て資産のひとつとして、海外の高金利債券に投資することはどうでしょう。今の日本の金利はほぼゼロに等しく、預金だって債券だって全くお金が増えません。そこで海外の高金利を得るために外債に投資すればいいのではないか、というアイデアが出てきます。しかしながら実は同じ外国資産でも株式を持つことには意味がありますが、債券を保有することはほとんど意味がありません。その理由は何でしょうか?
金利が高いということは何を意味しているのかよく考えるべきです。それは基本的にはその国の物価が上昇しているからです。通貨の値打ちというのは、「そのお金でどれだけの品物が買えるか」、すなわち購買力です。通貨を両替する時の基準となる「為替レート」は最終的には二国間での購買力が等しくなるように調整されるという性質を持っています。これは為替レートを決定する要因としてはおおむね正しいと言って良いでしょう。
もしその国の金利が高いというのであれば多くの場合、その国がインフレ傾向にあるということですから、物価の上昇によってその国の通貨の購買力は低下するということになります。したがって購買力の低下幅がより大きい通貨は、低インフレで低金利の通貨に対して長期的にはその交換レートが下落することになりますから、いくら高金利通貨の債券を持っていても最終的には為替で調整され、国内の債券を持っているのと何ら変わりはなくなります。これが長期における為替変動のメカニズムなのです。したがって海外高金利債券を持っていてもあまり意味はありません。もちろん短期的には儲かることもありますが、それは前述した投機でうまく行った結果にすぎませんから、資産形成手段としては不適と言って良いでしょう。