都内在住の50代夫婦は、息子が猛然と勉強して地方の国立大学に入学したのを機に郊外の戸建て住宅を売却し、駅近の分譲を購入した。その後、ローン返済や修繕費、学費、仕送りの負担などの影響で家計は火の車。しかも、来年、54歳の夫は役職定年で年収が2割減る。ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんが授けた家計再生のヒントとは――。
一万円札
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戸建てから駅近の分譲マンションに住み替え…が裏目に出た

「老後のために、良かれと思って引っ越しをしたのに、逆に老後が不安になりました」

東京近郊に住む山本陽子さん(50 仮名)。会社員の夫、隆さん(54)と2人暮らしです。息子が一人いますが、地方の国立大学に通う3年生で、寮暮らしをしています。

1年後には勉強熱心な息子も独り立ちしますし、自分たちは老いていくばかり。ならば、交通の便がいい場所に住もうと考え、所有していた戸建て住宅を売却し、息子の大学入学に合わせ、3年前に駅に近いマンションを購入しました。

マンションの購入には当初、売却した戸建てと今までの貯金の一部を合わせ、1000万円の頭金を入れる予定をしていました。借りる金額を少なくして早期に完済すれば、老後は、住居費がかからずにすみ、生活費は退職金と年金でなんとかなるだろうと、算段を付けていたのです。

ところが、複数の人に相談した結果、「今は低金利の時代で住宅ローンの金利が低い。住宅ローン控除ではローン残高の1%が税額控除されるため、金利1%以下のローンを使えたら、控除の1%と金利との差分、儲けを出すこともできそうだ」と判断しました。

そのため、頭金は控除期間が過ぎてから、繰り上げ返済をするのに使うことにし、フルローンを組んで住宅を購入することにされたそうです。借入額3600万円、変動金利0.68%、25年返済のローンです。

あとで繰り上げ返済をするといっても、税金控除期間(10年)の間、1000万円をまるまる取っておくことに自信がありませんでした。そのため、600万円を外貨建ての生命保険に一括加入し、残り400万円は預貯金で取っておくことにしました。この時点で外貨保険が600万円、貯金が640万円という貯蓄状況です。

学費以外に、息子に寮費、生活費として月10万円超の仕送り

それなりに戦略を練った上での住み替えでしたが、家計は苦しくなってしまいました。

原因は、やはり住宅ローンにありました。売却した戸建ては相続したものだったので、住居費負担はほぼゼロでした。それだけに新居マンションで暮らし始めて重荷に感じたのは、維持コスト。返済ローンに加え、月々、修繕積立金と管理費、さらに駐車場料金もかかります。月の住居費は計18万円にもなってしまったのです。

会社員の夫とパートで働く山本さんの世帯月収は手取りで52万6000円ですが、支出はそれ以上で、家計は月1万5000円の赤字。ボーナスでそれを補塡ほてんしている状態です。

住居費以外でも大きな出費となっているのが息子の学費や仕送りです。寮費、生活費(月計10万5000円)は家計から出しており、ボーナスや貯金に手を出してはいませんが、年間160万円ほど支給されているボーナスは、半期に一度の学費の支払いや、車検、年払いの保険などで飛んでいきます。それどころか、本当は取っておかなくてはならない貯金を取り崩して支払いに回している状況です。