乗客が全員で青年を“しつけ”ていた
「ねえ、ご両親から礼儀正しく振る舞うことを教えてもらわなかったの?」
そう叱りつけた上で、致命的な打撃を与えました。
「自分のおばあちゃんを、公共のバスでどんなふうに扱ってもらいたいか、考えてみたらどう?」
この時点で、バスの中で注目していない人は一人もいませんでした。まるで、バス全体が青年の家族の一員になったかのよう――みんなが両親、祖父母、おば、おじがするように、青年をしつけていたのです。
青年の強がりはすぐに消え去り、顔が赤らみました。
私は口の中が乾き、青年のことが心配になりました。私でさえ鮮明に記憶しているくらいですから、この一件は彼にどれほど大きな影響を残したことでしょう。
少年の祖母についての質問が出たことは、とりわけ印象的でした。というのも、ジャマイカ人の生活は家庭が――とりわけ、規律を守る文化の形成において――中心的な役割を果たしているからです。
若者たちの厳格な「モーニングルーティン」
この国の大学時代の友人の家を訪ねた私は、構造化された厳格なルーチンを家族全員が守っていることに、気づかずにはいられませんでした。
子どもたちは月曜日の朝早く起きて、学校に行く前に割り当てられたすべての雑用を済ませます。
ベッドを整えた後、一人はテーブルのセッティングをし、もう一人は朝食の準備を手伝い、三人目は洗いものを手伝います。
そして、清楚な姿で学校に向かって出発します――アイロン済の制服を着て、女の子は髪にリボンをつけ、定められた丈のスカートをはいて。
教育はジャマイカで非常に重んじられていますが、子どもたちには、家族の仕事を手伝うことも期待されています。
たとえば農家なら動物の世話、商人なら商品の販売というように。夏には、子どもたちは祖父母の家で時間を過ごして、大きな果樹園のリンゴの木を整え、近所の果樹園で同じことをして、お返しにリンゴをいくつかもらい、売ってお小遣いにすることもあります。
ジャマイカでは幼い頃から、自分の役割を十分に果たし、責任を引き受けることを教えられます。
このことについて、私が泊まった家のお母さんは、当たり前のようにこう表現してくれました。
「子どもたちはお手伝いや用事をしなきゃいけないし、やることが思いつかなければ、自分から探しに行かなきゃならないのよ」
このような教育的アプローチが、陸上競技などの若者の育成にも役立っているのは間違いないところです。でなければ、人口300万人たらずで、日本の本州の半分ほどの広さしかない島国が、各界でレジェンドを輩出し続ける理由が説明できません。