開会式を見た。日本人にしか分からないアイウエオ順の行進にそうしなければならない特別な理由があったのだろうか? とにかく抽象的過ぎるダンスが延々と続き、だんだんと眠くなる。聖火ランナーには医療従事者や子供たちが出演させられている。この状況で彼らを危険の中へさらすのを見て嫌な気持ちになった。

責任者2人による開会の挨拶は建前だけの絵空事に終わったが、さすが元五輪選手たち、ここまでたたかれてもへこたれないメンタルの強さは証明された。アメリカでの開会式の視聴者数は1988年のソウル夏季五輪を下回り過去33年で最低だったというが、こんな開会式なら逆に見られなくてよかったかもしれない。

「交渉ができない日本はゲームに敗れた」

ワクチン接種が進むアメリカで、人々はオリンピックどころではなく2年ぶりの本物のサマーを楽しむことに夢中だ。変異株が話題になり感染者は増えているが、ロックダウンの悪夢を二度と繰り返さないためにコロナと共存する道を模索する。

一方の日本では、飲食店にお酒の提供を禁じ、人々は自粛を強いられる。不平等な状況下で、金銀銅と順位を決めるイベントをやる意味がどこにあるのだろう。感染者はうなぎ上りで増えている。

この1年の中で何度も、世界を味方に付けて五輪自体の新しい方向性を示すことができたのに、交渉ができない日本はこのゲームに敗れた。ここまで犠牲を払って目くらましのようなイベント(CBSのアンカーも同じことを言っていた)をやる意味を、世界は冷静に見ていると思う。

2028年にロサンゼルス夏季五輪が開かれる頃、人々のオリンピックへの視線はどうなっているだろう。アメリカでも自国でやるとなるとそれなりにお祭りになるだろうか。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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