運命を変えた一本の電話

数字を聞いてしまうと、それまでSVとして経営陣と現場を行き来するなかで、少しずつ気づき始めていた会社の問題点がいくつも頭に浮かんできました。

経営陣がやりたいことが下まできちんと届きづらい状況でした。組織として風通しが良くない。私と同じ立場の人たちが、自分の意見を言えていない状況だったのです。

ミーティングに関しても、本当に数字の羅列でしかなく、問題点が頭のなかに入ってきません。「前年対比◯%、いくらの売上で、いくらで着地しました。原価率◯%、人件費率◯%、◯%の着地です。◯◯店が%落ちたので、改善したいと思います」とただ数字を読み上げるだけ。現場で何が起きているのか、問題点は何で、どうすれば改善できるのか。そういった実のある会議からは程遠かったのです。

厚木店をはじめとする3つの新店舗についても、赤字にもかかわらず、運営方法などの問題点に対する効果的な改善策が議論されていないと感じていました。

私には、このままだと本当に会社が終わってしまう未来が見えていました。何かしなければと焦りました。数字を聞いてから数日後、三ツ境店から金沢八景店に移動する乗換で横浜駅に降り立った際に、そのまま駅構内から専務に電話をかけました。

昼下がりで、ショッピング客や学生さんたちで駅構内は賑わっていたのを覚えています。電話がつながり、「どうしましたか」との問いかけに、私は一言、こう言ったのです。

「私を、意見の言える立場にしてください」

改善策をしつこく提案

切羽詰まった様子で「私を、意見の言える立場にしてください」と言う私に、専務は落ち着いた声で「それって役員になるということですよね。それは無理ですね」とおっしゃいました。「何の数字も出していないのに、それは無理です」と。

その言葉を聞いて少し落ち着き「まあ、そうだろうな」と思いました。同時に、全社的にそこまで落ち込んでいる時に、私が1人で数字を出すことは不可能だとも思いました。

ビジネスにおける数字とはいろいろな積み重ねの結果で出てくるもの。一朝一夕で逆転できるものではありません。

でもそれ以上、言葉が出てこず、私は「わかりました」と電話を切りました。

私はその後も諦めませんでした。数回にわたり、専務にメールで改善策を送りました。

再建の道筋を考えて、苦手なエクセルで収支予測表を作成して提出しました。運営会社が変わってから人件費が伸びている問題点などを指摘し、自分なりの改善策を提案しました。

また、物流コストを抑えるためにドミナント戦略を検討すべきとも提案しました。ドムドムハンバーガーは国内に店舗が点在していて、物流コストがかかってしまっていたのです。例えば当時、九州には2店舗しかありませんでした。そこへの物流コストがプラス何十万とかかっていました。遠隔地のため宅配便で配達していたので、余分なコストがかかっていたのです。