「所得が多いイコールお金持ちではないです」

こうした状況に対し、子育て世代の不満と不安が噴出しています。次にあげた2つのコメントは、Yahoo!ニュースへのコメント欄に寄せられた現役子育て世代からの投稿です。

子ども四人います。
児童手当は一人5000円です。
所得が多くてもほとんど税金にもってかれていて食費は月に7万くらいです。
正直毎月キツイです。
所得制限で私立の補助制度も受けられません。
児童手当は学費のため貯金してましたが削られてしまったら、今後が不安でしかないです。私たちばかり削らず自分たちも削ったらどうでしょうか?
所得が多いイコールお金持ちではないです。

共働きで世帯年収1000万円、3人子供がいて、高校無償化の恩恵も全く受けられず、これならひとり親家庭になったほうがよっぽど良い。児童手当まで受けられないなんて。たくさん納税しているのに、子どもの望む教育を我慢させなければいけないなんて……。離婚届出すべきか……本気で悩んでいる家庭はうちだけではない。
(ともにYahoo!ニュース「児童手当の特例給付、廃止検討 待機児童解消の財源に」へのコメント)

学校の教室
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

なんのために働いているのかという無力感

また、働くカップルの就労意欲をそいでいるという点でも大問題です。所得の減少は消費の減少につながり、GDP縮小や景気後退の原因ともなるからです。私自身も、仕事、子育て、そして介護を同時にこなしてきました。子どもにまったく支援がないなら、なんのために働いているのかと無力感に襲われることもあります。

末冨芳・桜井啓太『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』(光文社新書)
末冨芳・桜井啓太『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』(光文社新書)

Business Insiderの記者・竹下郁子さんの記事では、医療従事者の女性が次のように話していました。

児童手当をあてにできなくなるかもしれないなんて、考えたこともなかった。怒りで一晩眠れませんでした。
歯を食いしばって仕事と子育てを両立させ、管理職にもなったのに、働けば働くほど損をする制度なら、時短勤務にするか、いっそ仕事を辞めようかと正直、悩んでいます。(「年収1200万円以上の児童手当廃止は『働き損の子育て罰』。キャリア断念、産み控え、仮面離婚考えた夫婦も」2020年12月16日Business Insider記事)

(後編に続く)

※1 産経新聞「〈独自〉児童手当の特例給付、廃止検討 待機児童解消の財源に」(2020年11月6日)
※2 日本経済新聞「児童手当『年収1200万円以上』支給せず 法案を閣議決定」(2021年2月2日)
※3 立憲民主党,2021,「【衆院本会議】大西健介議員『コロナ禍でなぜ児童手当を削減するのか』 子ども・子育て支援法案
※4 内閣府,2021,「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案の概要」p.6

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