2011年、青梅市河辺に、「炭火焼きとり 火の鳥」を開業、2店舗目も軌道に乗った2014年、株式会社チャスを設立。30代は飲食業に邁進、店舗を増やして行った。

写真=菊池康弘さん提供
飲食店のオープンで笑顔を見せる菊池さん(後列の左から2番目)   

順風満帆と思われた2019年12月、店から火事を起こし、年末の予約客300人を一気に失うとともに、店舗の解体費用含め大損害を被った。普通なら意気消沈して萎縮してしまうところだが、菊池さんは違った。

「会社的には本当に大変な状態でしたが、巻き返しをはかって、2020年1月と3月に新店舗を出したんです。ピンチのときほど、動かないといけない。行動し続けることで、好転するという思いがあって。でも、すぐにコロナですよ。12月にも新店舗を出したんです。そうしたら、2週間で緊急事態宣言。2020年はとんでもない年でした。でもそうした中で、映画館プロジェクトも進めていたわけです」

結局、2019年度の営業利益は、735万円の赤字。6月決算の同社にとって、最初の緊急事態宣言が響いたのだ。その後、コロナ禍は続き、さらに2020年度の営業利益は2000万円の赤字に拡大した。

「協力金と雇用調整助成金をなんとかフル活用して乗り切っている状況です。ただ、リストラは1人もしていません。むしろ、去年は新たに3店舗を新規出店したので、社員などは増えました」

最も大切なことは「人に必要とされているか」

具体的に映画館づくりのプロジェクトが始動したのは、2018年の冬。タウンマネージャーの紹介で、現在の建物に出会ったのがきっかけだった。

「文化財を活用して映画館にするっていう発想が、面白いと思いました。この街は映画の街として栄えた歴史があって、その文化の上に50年ぶりに新たな映画館を復活させることにすごく意味がある。地域の映画館は、みんなが集まり交流できる場所として、地域に寄り添える空間。それをぜひ、地元でやりたいと思いました」

菊池康弘氏
写真=「シネマネコ」提供
”映画の街”青梅に映画館を復活させた菊池さん

そして40代を目前に、映画館のオーナーという新たな扉を開けた。2018年はまだ新型コロナの影も形も見えない時期とはいえ、ミニシアターの閉館が相次ぎ、映画業界の景気が必ずしもいいとは言えない中、どのような採算のもと映画の世界に飛び込むことにしたのだろうか。

この問いに、菊池さんの答えは明快だった。

「僕はビジネスを始めるときに、あまり数字は気にしないし、収支計算は重要視していません。もちろん、計画書とかは作るんですけれど、それよりも大義があるか、そのサービスが必要とされているか、されていないのかということですね。こっちが売りたい物を売るのではなくて、届けてもらいたいものを、作って届けるという発想です。飲食店を始めたのも、近隣に焼きとり屋がないという声があり、ニーズがあるから打ち出したのです。本当に求められているもの、必要とされているもの、価値あるものにフォーカスを当てていくと、自分がやるべきことが見えてくる。それをビジネスとして成立させるためにどうするかとなって初めて、数字の問題が出てくるわけです」