「必ず、道は開ける」笑顔の奥の揺るぎない確信

「数字はあまり気にしない」と語った菊池さんではあるが、もちろん採算ラインを見据えての目標値は設定している。収容率は、25%から30%が目標。そのためには1日に平均して80人、ひと月に約2000人の来場者が必要だ。

初日に来場のお客様一人ひとりに花を一輪ずつ渡す(手前左の女性がスタッフ。右の女性がお客さん左端が菊池氏
筆者撮影
初日は来場者一人ひとりに花を一輪ずつ渡した(手前左の女性がスタッフ。右の女性が来場者。左端が菊池さん)

全63席のシアターで、1日に3~4作の映画を入れ替え制で上映するシステムで、1日平均80人は、決して実現不可能なミッションではない。

「コロナは必ず落ち着きます。その後は、お客さんの求めるものにいかに価値をつけて、サービスを提供できるか。その視点さえずれなければ、ビジネスはあまり難しいのもではないんじゃないかなと思います」

オープン前に、いくつかのメディアが、コロナ禍という逆風の中での船出となった「シネマネコ」を取り上げた。だが、取材を受ける菊池さんの口からは、不運を嘆くような言葉や、恨み言は一つも出ない。その表情は、泰然自若としたものに見える。

「テレビでもパソコンでもなく、木の匂いや独特の空気などを感じながら映画館の大きなスクリーンで、映画に没頭する特別な時間を過ごしてもらう。観た後もゆっくり過ごしたいと思えるよう、余韻的なものも大事にしたいですね」

柔らかな笑顔には、人々に喜んでもらえるサービスを提供できれば、必ず道は開ける、という揺るぎなき確信が宿っていた。

映画館外観
写真=「シネマネコ」提供
国の登録有形文化財の建造物が「映画館」として生まれ変わった  
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