韓国大統領の「五輪訪日説」が浮上

オリンピック開催がいよいよ不可逆の様相になっている。東京をはじめとする大部分の競技場で無観客観戦が決定、その中で韓国の文在寅大統領のオリンピック開会式への参加と菅義偉首相との日韓首脳会談が浮上し、日韓政府間交渉について報道に再び熱気が入り始めている。

東京五輪・パラリンピック競技大会推進本部で発言する菅義偉首相
東京五輪・パラリンピック競技大会推進本部で発言する菅義偉首相=2021年7月16日、首相官邸

言うまでもなく現下の日韓関係は、相互の歴史認識がこじれにこじれ、「戦後最悪」と言われるところまで落ち込んでいる。特に2018年の秋、元徴用工やその遺族が日本企業を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、韓国の最高裁大法廷は確定有罪判決を出してしまった。

徴用工問題は1965年の日韓請求権協定によって解決済みというのは、長い間日韓両政府の共通解釈だったにもかかわらず。

また、文在寅政権は同じく2018年秋、慰安婦問題をめぐり、日韓合意に基づき日本政府の10億円の拠出によって2015年に創設された「和解・癒やし財団」を解体してしまった。河野談話とアジア女性基金に基づいても解決しえなかった韓国との慰安婦問題について、両政府に両国市民団体も加わり、ようやく締結した2015年合意の果実を、韓国側の一方的判断で無効化したのである。

安倍・菅両政権は自ら動くことをやめていたが…

2019年以降、安倍・菅両政権が、日韓関係の改善は文在寅政権の実質的対応にかかっているとして、自ら動くことを止めたのにはそうした原因がある。ただ、これまでの日韓両政府の動きは、国際場裡における米トランプ政権の日韓歴史問題への無関心を背景にしていた。

しかしながら、時代は急速に変化する。

2021年1月にバイデン氏が米国大統領に就任してからちょうど半年がたった。国際関係に対するバイデン大統領の動きについて大方の研究者は、アメリカの主たる脅威である中国と相対峙するにあたり、①欧州・アジアにおける「価値を同じくする国」との関係を重視し、②北東アジアにおいて日韓は、最重要な価値を共有する国となる、と分析してきた。

要するに、バイデン政権は東アジアにおいて、必ずや日韓の提携を要求してくるだろう。歴史認識問題についても、心の中の満足度には介入しないが、政府間の協力を妨げるところまで双方の反発心を肥大化させないよう、何らかの動きに出てくるだろうということである。