なぜ日本政府はこうも頑固なのか

日韓関係において非常な重要性をもつ首脳会談をめぐり、プレスへの事前リークによってどう見ても生産的とは思えない神経戦・宣伝戦が始まっている。

文大統領は年初より、日韓関係を外交と対話によって処理しようと求めてきた。7月12日、韓国大統領府は「韓国政府は日韓首脳会談を行う用意はあるが、会談が開催されれば成果がなければならないという立場」「今後日本側の態度が重要だと考えている」と述べている。

日本側はどうか。

筆者にはどうしても理解できない硬直性が、日本政府の対韓国アプローチの中にある。現下の韓国政治の一部は「司法による対日攻撃」によって日韓関係を破壊しようとしている。しかし、外交と対話は、この対極にあるアプローチであり、これこそ日本が目指すべき立場ではないのか。なぜ日本政府はこの隙間に迅速に切り込まないのか。これこそ日本の国益ではないか。

胸襟を開いて対話する得がたい機会だ

オリンピック開会式に参列し、同時に首脳会談を行うという行為が、文大統領の政治目的に合致していることは言うまでもない。しかし、菅内閣にとっても、開会式に1人でも多くの首脳が参列することは、望ましいことではないか。

国立競技場前のオリンピックミュージアム
撮影=プレジデントオンライン編集部
国立競技場前のオリンピックミュージアム

そう考えるなら、今こそ「この機会に胸襟を開いて前提条件なしに対話をしたい」という公開メッセージに切り替える得がたい機会ではないか。

日本政府に関係改善の意思があることを率直に伝えるなら、慰安婦については2015年協定の再起動、徴用工については民間当事者同士の裁判として当事者和解の追求という、官民を挙げた交渉への糸口はすでに出来上がっているといってもよいと思う。

にもかかわらず、日本政府からのメッセージは伝わってこない。

米国の最も親日的なシンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)が最近主催した「バイデン政権が日韓関係にプラスの役割を果たせるか」というテーマで、スタンフォード大学講師のダン・スナイダー氏とソウル国立大学日本研究所長のパク・チョルヒー教授との間で書簡討論が行われた。

この2人は今、世界中を見渡しても最高の「知日派」である。その2人が「鍵は柔軟なリーダーシップ」と指摘しつつ、2人とも韓国側の柔軟性に軍配を上げている。日本側が絶対の正義を自認している間に、またもや、日本の地盤が緩んでいる恐れはないのか。