これ以上双方の障害を増やしてはならない

日韓の火種は他にもある。7月16日から、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産会議がオンライン形式で始まった。そこでは長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)など「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録後の日本政府の措置をめぐる「軍艦島決議案」が、22日か23日に審議される予定となった。

2015年に日本の産業遺産が認定されるにあたり、認定遺産の一部で、植民地下で働いた朝鮮半島出身の労働者の状況を正しく後世に伝えるという宿題を日本政府は負ったのである。日本政府はその後詳細な調査を行い、その成果を2020年6月に開設された産業遺産情報センターに展示した。

2019年5月25日、長崎市の軍艦島に上陸したときの様子
撮影=プレジデントオンライン編集部
2019年5月25日、長崎市の軍艦島に上陸したときの様子

韓国政府はすぐにこれを歴史の歪曲として猛烈な抗議を行った。2021年6月にはユネスコ調査団が3日間にセンターを訪問し、7月12日にその報告書が公開された。報道で見る限り、報告書は韓国側の見解を全面採用している。

もちろん日本政府および関係者はこれからユネスコでの議論に誠意をもって説得を目指して応じていくことになると思う。

筆者としてはこの問題が「日韓首脳間の対話」をいざなうこそすれ、対話への障害とならないことを切に祈るのみである。

繰り返して言おう。文在寅大統領の東京オリンピック開会式出席の機をとらえ、今こそ日本政府が「この機会に胸襟を開いて前提条件なしに対話をしたい」という公開メッセージに切り替える得がたい機会なのではないか。

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