(2)は、作物栽培をイメージするといいかもしれない。「焚火体験」は、小さなコンテナで作物を育てる体験に近い。そうした栽培に興味を持った人の中には、(A)自宅近くで区画農園を借りる→(B)県境を越えて広い農園を借りる→(C)定年後や人生のステージ変更で移住して本格的な農作物栽培――と進む人もいる。
もちろん(A)から(C)に進むほど従事人口は減っていくので、本格的なキャンパーが一気に増えるわけではない。
(3)は、影響力を持つ人に訴求する手もある。キャンプ好きの中には、子ども時代に親に連れられて各地のキャンプに行き、ハマった人もいる。キャンプ好きの友人・知人に誘われて興味が深まったという人もいる。いずれにせよ「楽しい体験」が前提だ。
根強い「抵抗感」をどう解消するか
矢野経済研究所によると、国内のアウトドア関連市場は約5000億円といわれる。コロナ禍の外出自粛で、近年の伸びは一段落したが、人気は底堅い。
キャンプに興味を持つライト層も増えてきたが、課題も残る。例えば「衛生的ではない」という声だ。以前多かった不満が「入浴できない」ことだが、シャワー設備や温浴施設があるキャンプ場も増えて改善されてきた。炊事場もかなり進化してきた。
夏は「虫対策」も欠かせない。晴れていても天気の急変に備えた雨具の準備や防寒具も必要だ。いずれも熟練者には当たり前だが、興味を持ったばかりの人には分からない。
どこに抵抗感をもつかは個人差があり、どの層にどう訴求するかはマーケティング次第だろう。
楽しい体験は思い出として残り、いつかどこかでやってみたくなる。便利すぎる日常生活を離れて「不便を楽しむ」人が増えれば、焚火愛好家も増えていくだろう。
「スノーピークのキャンプイベント終了後には、スタッフが会場を見回って清掃をしますが、ゴミもそれほど落ちていません。経験者ほど自分たちで出したゴミは持ち帰るのも徹底されていると感じます」(永松氏)
多くの場所では地面に直接火をつける直火は禁止だ。焚火台の使い方や利用ノウハウと一緒にマナーも学んでいきたい。